天下一品

Photo: こってり 2003. Tokyo, Sony Cyber-shot U10, 5mm(33mm)/F2.8

Photo: "こってり" 2003. Tokyo, Sony Cyber-shot U10, 5mm(33mm)/F2.8

初めて天下一品を食べたときの感想は、「結構、美味い」だったが、最近はそうも感じない。なんだろう、凄く疲れていたり、凄く急いでいたりするときに食べるせいだろうか。あるいは、なんとなくテーブルがぬるぬるしているからだろうか。

今日は疲れた。でも、時間もないし、とりあえず角の天一で喰っておくか。相変わらず、どろどろしたスープ。ラーメンの汁を飲む習慣が無いのだが、この汁を残すとなんだかえらく損した気分になる。(飲まないけど)


歌舞伎町の天一。こんな所で、酒飲んで愚痴ってるサラリーマンがいる。あんなのには、なりたくない。でも、仕方ないのかもしれないよね、と最近思える自分が、キライ。

食べているとだんだんイヤになってくる。ぬるぬるしたテーブルも床もイヤ。よどんだ空気と、うんざりするBGMもいや。歌舞伎町はキライ。

あのパイナップルみたいな頭の人

髪を切りに行くと、いつになく混んでいる。で、見たことの無い人が付いた。妙に言葉遣いがこなれているというか、丁寧というか、珍しい感じ。髪を洗いに来た顔見知りの店員に話しかける。

「見たこと無い人多いね」

「土日は他店からヘルプが来るんですけど、羊さんの頭やってるの係長さんですよ。店長より偉いんです」

「ふーん(あのパイナップルみたいな頭の人ね、、)」


前に、最後に鏡を見せられて、「コレでよろしいですか?」と聞かれて「ダメ」という人が居るのか、訊いてみたことがある。で、もちろん、居るんだそ うだ。「短くは直せますけど、伸ばすのは無理なんですよね」まあ、当たり前。で、僕の頭もできあがり、「係長」が鏡を持ってきて、

「よろしいでしょうか?」

係長、現場離れすぎ。

「ビールでも買ってあげようか?」

Photo: "発電機でライトアップ"

Photo: “発電機でライトアップ” 2004. Tokyo, Japan, Contax Tvs Digital, Carl Zeiss Vario Sonnar T* F2.8-4.8/35mm-105.

花見をしたことがない、という人が居たので、せっかくだからきっちり花を見に行くことにする。さすが、首都のど真ん中だけあって、派手にライトアップされた内堀の夜桜は綺麗だ。せっかくだから「ビールでも買ってあげようか?」と提案したけれど、さすがに歩きながら飲むのは嫌みたい。

頭の上をドームのように、桜が覆っている。「これは綺麗だなぁ」なんて言葉を、久しぶりに言った気がする。


そういえば、小さい頃に住んでいた家の直ぐ近くは、桜の植えられた長い長い遊歩道だった。僕はいつもそこを通って、バス停に歩いていたんだった。だから、桜の幹の独特のあの感じとか、若葉のそよぐ音とか、そういうものがとても懐かしい。驟雨に濡れた新緑の並木道とか、でかい毛虫が落ちてきたこととか、そんなことが次々思い出される。でも不思議なことに、咲いていた花の景色だけは、思い出せないんだ。