入国審査

Photo: "Santa Tresa."

Photo: “Santa Tresa.” 2001/5. Santa Tresa, San Jose, CA, CONTAX T2 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/38

飛行機の窓から見るサンノゼは、ゆるりとした広大な谷である。黄土色の低山。赤茶けた砂漠、そこに人工的な緑と、背の低い建物がへばりついている。

そして、この谷の別名が、「シリコンバレー」


妙にスムーズな飛び方をする新型のB777が、滑らかに機首を下げる。埃っぽい平屋建ての家々が、視界に入ってくる。空港の近くには、低所得者層の家が並ぶ。そういうケースが多いことに、いやでも気が付く。

着陸を前にして、フライトアテンダントがピノのグラスを下げていった。


サンフランシスコと異なり、サンノゼ空港に、観光客の姿はほとんどない。不法移民が流れ込むせいか、入国管理は非常に厳しい。食い下がる審査官に、 会社の ID カードを見せて切り抜ける。ここは、ハイテク産業で喰っている街。僕が取り出した写真付きの社員証は、パスポートよりも雄弁に身分を主張する。

汗だくで空港のシャトルバスに乗ると、米国流の強烈な冷房が出迎えてくれた。カリフォルニアは、初夏を迎えていた。

夏の夜の夢

Photo: 2001, 北海道留寿都, Nikon F100、AGFA Mono-color

Photo: 2001, 北海道留寿都, Nikon F100、AGFA Mono-color

夏の夜の夢、白い景色。

一羽の鳥が、スローモーションのように、ゆっくりと羽ばたいてゆく。

仕事の間の、細切れの睡眠。目が覚めると、生ぬるい空気。俺は誰だ、俺はいったい何だ。

鳥は、跳び続けるために、常に身軽でなければならない。だから、不要なものは、何でも捨てる。


迷う。

自分は何がやりたいのか、何をするべきか、悩む人。あるいは、何の疑問も持たない人。良い悪いではない、タイプの問題だ。

結局は、満足できない人間が、次の何かを見つける。葛藤の中からしか、新しいものは生まれない。そんな人にとって、道しるべは、自分の中にしかない。

注:気に入っている文章の割に、あんまり受けが良くなかった。

アドリア海

Photo: 1995. Venice, CONTAX T2 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/38, Agfa, FS

Photo: 1995. Venice, CONTAX T2 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/38, Agfa, FS

映画ハンニバルは、確かに酷い代物だったが、ベネツィアの美しさは良く撮れていた。

ブレード・ランナーで有名な、監督のリドリー・スコットは、闇を撮る監督である。ハンニバルのスクリーンの中で、街の其処此処に潜む闇は、南欧の光と美しく調和していた。中世の暗さと、華やかさを併せ持つ、それが、この街の空気である。


入り組んだ水路を、アドリア海に向かって抜ける。

陰鬱な壁の向こうに鮮烈な青空。このあたりの景色は、ルネッサンスの時代から、さほど変わってはいまい。建築は、太古の昔からそこにある岩壁のように聳える。ベネツィアの闇には、死と恐怖と、そして妖しい魅力が潜んでいる。


ベネツィアは海の街だ。僕は、いつか、海のある街に住みたいと思っている。
未だ住んだことは、ないのだけれど。

注1:リドリー・スコットは、ブレード・ランナーや、ブラック・レインの監督。撮る画の綺麗さで、群を抜く。トップガンの監督トニー・スコットの兄。最近、いまいち、、。
注2:映画ハンニバルのあまりに、あまりなラストに愕然とした人も多いと思う。なんじゃ、ありゃ。あと、スターリングやクレンドラーのキャスティングも最後まで馴染めなかった。原作は、とっても面白いので、お勧めです。
注3:1995年撮影。6年たって、やっとコメントを付けられました。