土曜日、上海地下鉄10号線

side street in Shanghai

Photo: "side street in China" 2011. China, Ricoh GR DIGITAL III, GR LENS F1.9/28.

上海、地下鉄。

香港で地下鉄の便利さが気に入って、上海でも地下鉄を使う。タクシーと違って、運転手の良心と力量に依存しないで済むのがいい。かなり遠くまで乗っても 5元、安い。


土曜の昼前、郊外の乗換駅を目指して地下鉄に乗っている。向かい側の座席には、お掃除ロボットのパチモンを買って家路に着く夫婦。なんとなく嬉しそうだ。

iPhoneからのびたイヤフォンを耳に突っ込み、騒ぐ子供に向かって、時折煩わしげに視線を送る丸刈りの大学生?は「世界上古史」と書かれたテキストに目を落としている。

ちょっと気が緩んだ様な、空気。土曜日の昼前。

上海でまたあの臭いをかぐ

side street in Shanghai

Photo: "side street in China" 2011. China, Ricoh GR DIGITAL III, GR LENS F1.9/28.

何度目かの中国。

初めて中国に行ったときは、北京だった。それから暫くして香港に行って、今回初めて上海に来た。最初に北京から行くというのは、多分中国入門としては、いささか濃かったかもしれない。


北京に比べれば、上海は色んなものがまだ穏やかで、比較的満遍なく近代化されていて、少しだけ英語が使える。港町の、開放的な空気もあって、でもせせこましい島社会の香港よりも格段に広々している。

中国独特のあの鼻をつく臭いは、もちろん、有るのだけれど、街中では随分少ない気がする。それにしても、あの臭いは何なのだろう。他のアジアの国では嗅がないあの臭い。香辛料?


昨日の夜は、店の中を子供が走り回る下町の料理屋で食べた。女将はしきりに水槽の中の魚を勧める。水槽の一つには、海老が沢山と、一緒に子ガメが入っている。あれは、食材の一つとして食べるのか。あるいは、単に食材と一緒に混ぜて飼っているペットなのか。いずれにしても、そんな所から選びたくない。

蒸し鶏、牛肉の味噌炒め、白菜と豚肉の炒め。三品を頼んで、青島の瓶ビールもとる。食器は上海の衛生局みたいなロゴが入ったビニールパックになっている。清潔です、という事だろうか、こういうのは初めて見た。味噌炒めの後味には、あの臭いがする。でも、まぁ、食べられる。蒸し鶏はあっさりしていて、けっこう良い。白菜と豚肉の炒めが一番食べられた。美味くはない、お腹は一杯。そんな食事が、二人で92元。(1,200円くらい)


今日、昼前、再開発されたオシャレ地域でビールを一杯。78元。色んなクラスの、いろんな時代の物価が、同居している。

15年後にアメリカでまずいランチボックスを開ける

lunch box

Photo: "lunch box" 2011. US, Ricoh GR DIGITAL III, GR LENS F1.9/28.

人の流れについて行くと、地下の広いスペースが食堂とランチボックスの配給場所になっていた。

そのスペースは、見た事が無いくらい広い。もちろん、日本でも幕張の展示場などは広いが、普通の天井高で部屋がひたすら奥に続いている光景は日本ではちょと見ない。あえていえば、もの凄く明るい地下駐車場?そんな雰囲気。まるでテレビで見た、アメリカの航空母艦か州刑務所の食堂のようだ。


ホットミールというのも選べたが、時間が無いので、ランチボックスにする。普通のと、ベジと、イタリアン、みたいな選択肢になっている。イタリアンが大量にあまっており、嫌な予感はしたが、あえて取ってみた。

もう、15年前のように、ランチボックスの中身に面食らったりはしない。危険そうなショートパスタの容器は開けもしないし、岩のようなパニーニはちょっとづつ囓る。ポテチみたいなスナックの袋が丸ごとはいっていても、それは、そんなもんかと思えるようになった。そうだ、初めての海外出張でアメリカに行ってから、もう15年が経ったのだ。


その時と、感じる事は変わっただろうか。ITという世界に無限の未来があった15年前とは、やっぱり気分は違う。おっかない外人にしか見えなかった人々は、その中にも良い人と悪い人が居るんだな、ということぐらいは分かるようになった。空港やホテルに漂う、何とも言えない外国の臭いが怖くはなくなった。

そうして、ちょっと落ち着いて、外の国を見ている気がする。