本当に大切なことは少ない。
カテゴリー: 四万十川・香川
珈琲屋
僕はコーヒーを飲まない。
カフェと言っても、ココアぐらいはたいていあるもので。まさか、コーヒー豆の直売所だとは思わなかった。直売所の側らにカウンターがしつらえてあっ て、イートインというか、ドリンクインがあるわけだ。そこで、商品の豆の中から、好きなモノを選んで入れてもらうことが出来る。つまり、本当にコーヒーし かない。
電車の踏切の側らに建つ、古い倉庫が店だ。コーヒーを入れた沢山の麻袋、焙煎のための大きくてレトロな感じの機械。そこに、古い家具を入れて、店の 体裁になっている。店は、若い夫婦が二人で切り盛りしている。こんなところで、コーヒー豆の専門店をして、商売になるのだろうか?
いっそ、一番濃くて苦いヤツを頼む。焼き物はよくわかないが、大ぶりの、碧く絵付けのされたコーヒーカップに入って、コーヒーが置かれた。ザワザワした振動の後で、窓の直ぐ外を電車が走り抜けていく。振り子時計が、ゆっくり動いている。
飲んでいる途中で、予約した碾き上がりの豆を、近所の子供が取りに来た。海辺のこんな小さな町でも、結構、商売は成り立つのかもしれない。コーヒーと関係のない人生を送る僕のような人間は、多数派ではないのだ。
飲み終わって会計をする。値段は、とても安い。喫茶店ではないので、大人数での来店や長居はお断り、と書かれた張り紙の意味が、分かった。
錆びたブランコ
港に通じる道の、その脇に鳥居がある。鳥居から続く、息が切れるような階段を上ると、神社の境内の前に小さな公園がある。そこには、錆びたブランコがあって、突堤の先まで見渡すことができる。
よくこんなロケ地を見つけたなぁ、というのが偽らざる感想だった。
僕はそのドラマを見たことが無いのだけれど、その景色に物語を付けるのは、もはや容易いことのように錯覚された。