サイトの復活とジオシティーズの消滅

ドメインの移行、それも自分の元のドメインを人質にとられた状態での移行、というのがいかに困難か、今回図らずも思い知ることになった。Wordpressの設定を直そうにも、そもそも元のサイトにログインできないし(レンタルなのでhostsを書き換えるとかも無理)、xserverはドメインごとにユーザーディレクトリの下が別れるので、ドメインを変えたらそこからやり直しだ。


そういう訳で、今回は名前解決ができないWordpressサイトをドメイン移行させるという、およそ正月休みでも無ければやる気にならない作業を存分に楽しむ事になった。ファイルの移行の方は、幸いxseverはSSHでアクセスできるので、cp -a でファイルコピーしてつつがなく完了。あとは、MySQLの中身をsheeppage.comをsheeppage.netで置換すればいいんじゃ無いの?という気分になったのだが、それほど単純なものではないようだ。Search Replace DBというツールでうまく行きそうな気配はあったが、Ajaxエラー。検索するとこれはあるあるで、前のバージョンを使ってWarningはだしながらもなんとか移行はできた。

そうして、サイトをリカバリーしていて、改めて眺めてみるとなんとも古く感じてしまって、いろいろCSSをいじったWordPressのThemeも変えてしまおうと思い至った。どうせ、失われるものは失われたのだ。左ナビゲーションも捨てたし、もうフラットデザインでいいよね。あと、サイトも25年にもなると、さすがに昔からの読者の視力も衰えている可能性もあろうと言うことで、フォントを懐かしのリュウミン系から、ユニバーサルデザインのモリサワ TBUDゴシックに変更した。

僕は未だに長文を読むときはMacを使っているし、13インチのMacBook Proのキーボードがリニューアルされたら買うつもりだ。が、それはどうでも良い事だとして、今は70パーセント程のアクセスがスマホ経由になっているという事実も、デザインの見直しを考えた理由だ。あくまでPCサイトをメインにしたメニュー配列を改め、モバイルでは処理を分岐させてスクロール量が減るようにしてみたりする。25年が経って、基本テキストだけのこのサイトも、今はスマホで読まれているのだ。


それにしても、消えていくサイトのデータをきちんとどこかに保管しておかないと、それこそ将来、何も市井の記録が残らなくなってしまうのでは無いか、そんな事も考える。今回は、データが有ったから移行は出来たが、暫くは検索から「羊ページ」でここにたどり着くことはできなかった。昔からの読者が再びこのサイトを見つけてくれればよいが、そのまま閉鎖と思い込んだことは大いに考えられる。

サイトを維持する、というのは意外と簡単につまずいて、取り戻すのは意外と容易ではない。去年のジオシティーズの閉鎖で、僕のはてなアンテナのテキスト系登録サイトのうち、今でも到達可能なサイトは一気に減ってしまった。万人が発信できるインターネットも、結局は、データの保管コストの観点から考えると勝者の歴史、勝者のデータだけが残るのかもしれない。

自分のサイトに起こった出来事と、そしてスカスカになったはてなアンテナ。0秒で消えるデータ。無論、消える自由、忘れられる自由はあるのだが、人類が電脳をもう一つの巨大な集合知とするには、それを場当たりに忘却させるだけで良いのか?という疑問を感じた出来事ではあった。

そうそう、テキスト庵みたいなもの、誰かまた作ってくれないかな。

でかい卵サンド

Photo: “AMANOYA Traditional japanese egg sandwich.”

Photo: “AMANOYA Traditional japanese egg sandwich.” 2019. Tokyo, Japan, Apple iPhone XS max.

羽田空港、午前7時30分。別に腹は減っていない。

テレビか何かで取り上げられて有名な「あの」たまごサンドが、早朝につき、なんと今なら入手可能。

みたいな空気感を出して、そいつはANA FESTAの入り口で売られていた。まったくの初見だったが、あまりに気になったので買ってみた。卵だけで1,000円超え、どれほど凄いんだ。


大層なラッピングを剥がし、期待して口に運ぶ。ちょっと甘い鮨屋の卵を想像して食べると、全然甘くない蕎麦屋のだし巻き卵だった。ケーキ然としたカワイイ見た目をして、そっち路線なのか。

「天のや」のたまごサンドは、海外向けサイトでは”Traditional japanese egg sandwich”と書いてある。サンドイッチがTraditionalか?という疑問はつまり、「伝統的なだし巻き卵が」サンドされているという意味なのかもしれない。

同行者が買ってきたのは「肉の万世 ハンバーグサンド」で、万かつおみくじが付いている。お互い食べもので煽っていくスタイルは、ブレない。万かつおみくじは「吉」。今日のラッキーカラーは茶色で、ラッキーイートは肉団子。そこは、ハンバーグじゃないの。


卵だけで1,000円超え、それはつまり、凄く量が多いという事(12カットも入っている)。ハンバーグサンドの方は初めて食べたが、カツサンドより重たいサンドイッチは初めてだよ。いずれにしても、野菜がなさ過ぎる。

ヘビー級のサンドイッチ達を、未だ朝焼けのラウンジで平らげる。胸やけも、する。

バーテンダーはなぜ風邪をひかないのか

Photo: “Daydream in the bar.”

Photo: “Daydream in the bar.” 2019. Okinawa, Japan, Fujifilm X-Pro2, Fujifilm M Mount Adaptor + Carl Zeiss Biogon T*2,8/28 ZM, PROVIA film simulation.

数年前に「かぜの科学:もっとも身近な病の生態」という、なかなかに分厚い本を読んで、もはやだいぶ内容は忘れてしまったのだけれど、風邪やインフルエンザの感染経路の多くが、目や鼻であるという実験結果が印象的だった。(風邪の人を閉鎖施設に集めて、鼻水だらけの手でポーカーをえんえんとさせるとか、凄い対照実験が行われていた)人の手は、容易に感染源に触れるし、更に無意識に1時間に数十回、自分自身の鼻や目を触る。そして、その粘膜を経由して、感染が発生するのだ。だから、感染を避ける実効的な習慣とは、目や鼻を触らないようにし、手洗いをきちんとすること、その2点に尽きるという。

この分厚い本を読んでから、出先で素手で目や鼻に触らないように気をつけ、トイレに入る度に念入りに手を洗っている。「よく手を洗いますねぇ」とトイレで声をかけられるレベルで、という事だ。そうして、それが習慣になって以来、インフルエンザにも寝込むような風邪にもかかっていない。(別の事で死にかけはしたが)


さて、バー。基本一人で行くから、やることと言えば、バック・バーに並ぶ酒を眺めたり、バーテンがカクテルを造る所作を眺める事ぐらいしかない。そして、彼らの立ち振る舞いを見ていて、ふと、顔を触ってるバーテンって見たことないなと思う。バーテンダーって、顔を触らないように気をつけているとかあるの?

「はい、それは厳しく言われますね。首から上を触るなと。」

そう答えるバーテンダーは、頰に手を当てて考えているようなポーズをしているが、実は手は顔に触れていない。そうなのだ、(まっとうな)バーテンダーは顔を触らない。そして、彼はこの仕事について以来、風邪をひいて寝込んだ事はないという。見習いから入って、店を持つまで15年はかかっているだろう。

バーテンダーはカウンターが職場だから、他の接客業に比しても顧客との距離が近い。バーに来るいろんなコンディションの人と、接する立場にあるだろう。それにしては、風邪がうつったりしていないのかもしれない。飲み物をつくる立場として、顔を触らないというルールがある珍しい職種であることが、結果として風邪にかかりにくい振る舞いになっているのかもしれない。

そんな事を話しながら、そうは言ってもこの元剣道部のバーテンダーは、相当に体が頑丈そうだな、とも思った。