日本は、今頃お祝いかな?
スウェーデン人から、あまり要領を得ないLINEが来る。お祝い?何のことだろう。そうか、春節みたいなもののことを言っているのか。いや、日本はあまり祝わない。スウェーデン人の誤解だ。確かに、割と多くのアジア圏で、旧正月は祝われる。過去への決別というか、執着の無さという点で、アジアの中でも、現代の日本はやっぱりちょっと違っている。
夜、集まりが終わって坂道を少し歩く。土地勘が無いので、家の方向に行っているのか、とんでもなく外れているのか、よく分からない。それでも気分良く歩ける。よく後輩と、何キロも意味も無く夜の道を歩いた。こんな冬の終わりみたいな時期も、歩いた。寒すぎて、ドンキでパーカーを買ったりした。
今日は、一人で歩いている。際限なく歩くわけにも行かないので、信号待ちをしていたイカツい漆黒のホンダの個人タクシーに、手を挙げた。
「今日は、陽気が良いですから、人が多いですね」
初老、と言って良い運転手は、気さくに話しかけてきた。この仕事は一期一会だから、お客には必ず一言話しかけることにしている、と、元自衛官の運転手は言っていたな。そんな事を思い出す。彼も、今では某区のタクシー協会の理事になってしまっている。最近連絡したら、理事はあまりタクシーには乗らないらしい。
少し乗って、突然
「今日は東京タワー見られました?」
と訊いてくる。いや、今日は東京タワーを見てない。日々のほとんどは、東京タワーは見ない生活だ。
「春節でね、今日は真っ赤になっているんですよ」
そう言って、1分も経たずに、ビルの谷間からちらりとタワーが見えた。予想と違って、全体が赤いのでは無くて、大きな赤い斑点が、タワーの輪郭を浮かび上がらせていた。
そうか、中国正月か。台湾華語でも勉強するか。