にょっ記。
鳩サブレーは、頭が旨いことは自明だが、その事実について言及した本に初めて出会った。鳩サブレーは断然、頭から食べるべきなのだ。
実はこの本はシリーズなので、鳩サブレーについて実際に書いてあったのが、「にょっ記」なのか「にょにょっ記」なのか、「にょにょにょっ記」なのか忘れたが、僕は少なくとも全三冊をあっという間に読んでしまった。もう図書館に返してしまったので、どれに書いてあったのか確認できない。
自宅に書庫を設けられるような身分になった暁には、三巻共に揃えたいと思う。
にょっ記。
鳩サブレーは、頭が旨いことは自明だが、その事実について言及した本に初めて出会った。鳩サブレーは断然、頭から食べるべきなのだ。
実はこの本はシリーズなので、鳩サブレーについて実際に書いてあったのが、「にょっ記」なのか「にょにょっ記」なのか、「にょにょにょっ記」なのか忘れたが、僕は少なくとも全三冊をあっという間に読んでしまった。もう図書館に返してしまったので、どれに書いてあったのか確認できない。
自宅に書庫を設けられるような身分になった暁には、三巻共に揃えたいと思う。
カブトムシ氏を発見してはや半年弱が過ぎた。夏が終わり、秋が来て虫の声が響き、そして虫の声も絶えた今、カブトムシ氏は変わらずに生活している。虫は懐かないと思われるが、それでも数カ月前からは、腹が空くと水槽を叩くことを覚えたようだ。
元々、昆虫というのはかなり短い、限られた時間を生きるように、その体が出来ている。血管が通らない体は、だんだん脆くなるようで、脚の幾つかは先端がとれてしまった。枝の上り下りに、やや不自由を感じてはいるように見える。
それに寝ている(と僕が解釈している)時間は長くなった気がするし、でかい切り株をひっくり返してしまうような力仕事も、最近はしなくなった。穴に潜ってウトウトしている様は、おじいちゃん然としている。
長寿、と言って良いカブトムシ氏を見ていると、長生きポイントって何なのかが見えてくる。食べものが良くて(季節外れで超高価な化粧箱入りブドウ)、気候が快適で(虫用ヒーターが約23度を常に維持)、ストレスが少ない(クヌギのフィールドに入念に隠れ家を配置)、実に納得のいく理由。
彼が幸せな虫生を送っているのか、そればかりは分からないが、そもそも自分だって結局は幸せな生活なのか分からないんだから、知るよしも無いよね、と思っている。
台風が去った後の那覇は、暑さがぶり返していた。
一人で昼メシを探しに、国際通りの方まで歩いてきた。昼間の裏路地には、どこか寝ぼけたような空気が漂い、夜の喧噪を想像するのは難しい。
お土産屋、沖縄料理屋、お土産屋、沖縄料理屋。通りは、そんな感じで観光客相手の店が連なっている。あまりの暑さに、大きな土産屋に入って涼む。マーケティング的な工夫が凝らされた、およそ思いつく限りの土産物が並んでいる。
紅芋は、ちんすこうにされ、ケーキにされ、アイスにされ、行儀良く買われるのを待っている。どれもピンとこない。
店を出て、料理屋のメニューを覗いて、また歩き出す。昨日、仕事で会った新聞社の人とすれ違う。向こうも驚いた風で、いくら島とはいっても、那覇の大通りで再会するとは思いも寄らない。でもやっぱり、島は狭いのかもしれない。
すいぶん歩いているうちに、通りの外れの方まで来てしまった。ここまで来たなら、公設市場で何か食べるのも良いかと思って、市場に入る。自分の学生時代の記憶にある市場とはちょっと違って、アジアのいろんな所で見てきた市場に凄く近い。特に、臭いが。
アジアの臭いだと思って居たものは、有機物と、温度と、風の感じと、そういうものが作り上げているのかもしれない。本土では嗅がない臭い。
市場の二階は、大騒ぎだ。屋内だが屋台街のようになっていて、何軒もの食堂が、だいたい同じようなメニューで客を奪い合っている。ひっきりなしに料理が運ばれ、観光客の口に運ばれ、喧噪が市場の高い天井に響いている。
僕は、エレベーターの脇の椅子に座って、たいして違いの感じられない店を、ネットで調べている。で、うんざりする。ここはやめて、沖縄そばを食べに行こう。もっと、地元の人が毎日食べてるようなやつを。
市場を出て商店街を奥に進むと、だんだん売っているものが変わってくる。土産物屋は減り、ジューシーをパックに詰めたお総菜なんかが、たぶん、地元の人のお昼用に並んでいる。良い感じだ。
ついに商店街が途切れ、目当ての沖縄そば屋が見えてくる。やはり、かなり、そうとう、入りづらい。というか、入る感じじゃ無い。厨房をぐるっと取り囲むように半分野外にカウンターが配置され、場末のスナックのような椅子が、並んでいる。
客はまばら。食券で一番普通の沖縄そばを買う。400円、安い。厨房の様子を見ながら、自分でお茶をくんで飲む。クソ暑い那覇で、クソ熱いお茶。ほどなく、そばが出てきた。
甘口の鰹だしに、ぼそっとしたそば。すごくうまい、とかそういうのでは無い。土曜日の昼ご飯みたいな味。甘く味付けされた豚肉と、青ネギが嬉しい。カウンターを挟んで厨房では仕込みが続いている。そばの汁を仕込んでいるのだろうか、大きな鍋を相手に女将さんが格闘している。よっこらせっと、大きな袋を取り出す。業務用「ほんだし」
沖縄料理の出汁の基本は鰹だしだ。特に、沖縄の人は「ほんだし」を好んで使うと、沖縄出身の人に聞いたことがある。そして、業務用ほんだしを、客の眼前でなんのてらいもなく、がばっとお玉でとって、鍋にぶち込むその感じ。その清々しい感じで、むしろ、そばの味は2割ほど美味しく感じたのだ。