
港に通じる道の、その脇に鳥居がある。鳥居から続く、息が切れるような階段を上ると、神社の境内の前に小さな公園がある。そこには、錆びたブランコがあって、突堤の先まで見渡すことができる。
よくこんなロケ地を見つけたなぁ、というのが偽らざる感想だった。
僕はそのドラマを見たことが無いのだけれど、その景色に物語を付けるのは、もはや容易いことのように錯覚された。
「世界の中心で、愛を叫ぶ」をもちろん僕は見ていない。しかし、そのロケ地に来てしまった。(そんなのばっかり)
地元では、当初撮影が終わると、セットも何もさっさと壊してしまったそうだが、暫くして観光客が引きも切らずに訪れるようになると、遅まきながら「なにやら観光資源になるらしい」と気がついたという。
今では、一部のロケセットは再建され、ロケ地の名所には案内板が付けられ、市役所の入り口にはロケ地マップが置かれている。とは言っても、ここは至って普通の地方の漁村。ぐるぐる迷いながら、なんとかロケ地の「突堤」にたどり着いた。突堤マニアとしては、ここは外せない。
さて、この突堤はかなり良い、相当良い。長くて、真っ直ぐで、シンプルだ。文句のない、突堤だ。
狭い幅の割に、長く突き出た突堤を、どんどん歩く。気の抜けたような、瀬戸の内海が、ただ広がって、波はろくに打ち寄せもしない。自主制作の映画のロケハンだろうか、大学生風の二人組が、デジカメを手にしながらフレーミングをあれこれ試している。
ジリジリと暑い。僕はいつもやるように、突堤に腰をおろしたりはせず、そのまま元来た道を戻った。
原題は、Apocalypse Now Redux.
「帰ってきた黙示録」とかそんなぐらいか。特別完全版とかいう変な邦題を付けた人のセンスというか、映画に対する愛情を疑いたくなる。「地獄の」って何だ。
何か凄い字幕だなぁ、と思ってみたら、戸田奈津子字幕。調べてみると、もともとの「地獄の黙示録」の翻訳が彼女が字幕翻訳家として名を成すきっかけになった作品だったらしい。
いきなりひっかかったのは、有名な襲撃シーンの1カットでヒューイにフレアが飛び込むところ。”Flare! Flare!”を「信号弾だ!信号弾だ!」って、なんだそれ。チャフとかフレアって専門用語なのかもしれないけど、作品の性格から考えたらあくまで正確に訳して欲しい。(そういうのが分からない人が、わざわざこの「帰ってきた」を見るとは思えないし、今の時期にこの作品のDVDを買う人って、分からなかったら調べるタイプだろ)シーン自体が、信号弾を使うような状況じゃないし。
その他、至る所でなっち訳が爆発している。英語はあんまり得意じゃない僕が見ても、おかしいと思うところが結構ある。
作品自体はオリジナルのわけのわからない強引さは薄れたけど、より入りやすくなってるし、マスタリングもとても良い。テストでたまたまカメラを回していたナパーム着弾のシーンを、そのまま使ったというオープニングは、本当に凄い。これCGじゃ、ないんだよな。