「時の流れ」
なんていう手垢のつきすぎた、陳腐なフレーズの、下衆な歌詞がよくあるが。
ここでは時は、さっぱり流れていない。
いや、流れているのかもしれないが、そのまま海に流れ落ちて、雨雲になって、ものすごい勢いの雨となってまた元来た場所に降り注ぐのだ。
インドでは毎日雨が降った。
倦むことなく、惰眠をむさぼる犬の上にも、物見遊山の僕の上にも。
雨が止むと、草木はびっくりするほど青みを深くして、息を吹き返した。都市は、みっともなく水浸しになり、コンクリの隙間からは赤茶けた粘土が顔をのぞかせた。
倦むことのない繰り返し。流れない。