ホテルの前に、路面電車が走っている。仕事は、ちょうど合間。天気は、良い。
「ちょっと、出かけましょうか」
そして、僕たちは電車に乗った。とりあえず、海を目指して。
料金は、ビックリするほど安い。市街の路面電車に一日乗り放題、一部のバスも乗り放題で3ドル。電車、というのは、車が基本のアメリカでは、多分あまり高級な交通手段ではない。サンノゼ周辺を走る路面電車は VTA(Valley Transportation Authority) の運営する、Light Rail System といい、アメリカの公共交通機関という意味では、よく整備されている。
この電車、サンノゼ周辺をずーっと走るわけだが、地域によって見事に客層が違う。シリコンバレー周辺では、いかにも SE な感じの小金持ち。ダウンタウンでは、ほとんどヒスパニック系のブルーカラー。さらに郊外に行くと、リタイアした老人か、なんか危なそうなワカモノ(例外なくメタル T シャツと、ヘッ ドフォンを着用)。そして、どこに行くのか、何者なのか分からないアジア系(われわれ)。
車内の客層と雰囲気は、5分毎に刻々と変わっていく。多分、車で移動してしまったら、気が付かないこの街のいろんな空気。電車は、少しゆっくりした速度で、その中を走り抜ける。
電車は Apple の WWDC が開かれている国際会議場を抜け、ダウンタウンを抜け、さらにみすぼらしい新興住宅街を抜けて走る。今や、車両には我々の他、「100% 暇つぶし」にしか見えないバギーパンツ姿のご老人が1人しか乗っていない。そのバギーパンツ氏も、一つ手前の駅で降りてしまった。
終点。海がない。
「んー、間違って山の方に来ちゃいました」
ありゃありゃ。
注:後で切符の裏を見たら、「係官の要請があった場合には、速やかにこれを提示すること」と書いてあった。説明はよく読まないといけません。