日本人専用ガイドで行くJSAツアー

Photo: "The 38th Parallel."

Photo: “The 38th Parallel.” 2016. South Korea, Richo GR.

今をときめく板門店を訪れることができる、通称「JSA ツアー」もいよいよ大詰め。早朝に集合させられて、洞窟の中を這い回り、監視台からはるか北の領土を眺め、板門店で命の保証は求めない書類に署名し、もうお腹いっぱいだ。JSA から延々と漢江沿いに下って、やっとソウル市街に戻ってきた。

さて、このツアーでは英語客と日本語客が同じバスに乗っていて、ガイドがそれぞれ別についている。両方聞いていると、どうも喋っている内容が全然違う。英語版は比較的スタンダードな観光案内。日本語版の方は相当フリーダムで、息子が徴兵された時の話なんかもしている。

JSA 入境時の諸注意についての説明も、ちょっとディテールが違う気がして気になったが、そこはケンチャンナヨ。


ツアーの最後を、英語ガイドは、「いろいろ不便な事もあったと思うけれど、他に無い体験だったよね。んで、もうすぐ朝集合したホテルに着くけど、ここは市の中心街だからいろんな所に遊びに行けるよ!夜遊びに繰り出したい人達にオススメなのは、、。」と至って軽い感じでまとめた。

で、その夜遊び情報を日本語訳してくれるのかと思ったら、日本語ガイドは「この半島では、多くの家族が引き裂かれて暮らしています。その祖国統一の思いを、皆さんも日本に帰ったら思い起こして、、」とまぁ、全然内容が違う重苦しい100%予想できた展開の締めくくりがセットになっている所までが、このツアーのハイライト。

日常なるもの

“Sleepy dog.”

Photo: “Sleepy dog.” 2012. Bangkok, Thailand, Apple iPhone 4S.

大晦日に、風呂の掃除を終えて、ハテナブックマークのリストを眺めると、いろんなエントリーが、not found やforbidden になっている。亡くなってしまった人のエントリーが、まだ残されている。誰かが、そのスペースにお金を払っているのか、あるいは管理者の怠惰なのか。かと思えば友達の blog は削除されている。別に彼は元気だし、どこに行ったわけでもない。多分、忘れているだけなのだろう。

そんな感じの、あまりもう有効でもなくなってリストだけれど、そこにある blog なり、昔ながらのホームページなりを僕はしつこく読んでいて、そして僕もしつこくこのページを書き続けているのだ。


「今年は、正月の華やかさが無いねぇ。」

とタクシー運転手に話しかけられる。降りてくる人にも華やかさが無いと、運転手は言う。まあ、確かに僕にも華やかさは無いな。今の時代、毎日が日常で、盆暮れ正月だなんだという季節的な特別感は無くなっている。僕は、実は、それはそれでよいと思って居るから、それを嘆く運転手に話を合わせながらも、幾分申し訳ない気分になった。

最近の若い人は、あまりそういう事にお金を使わなくなっているしね、という方向に話は進む。記念日に特別なことを、というよりも、満たされた日常を積み重ねる事に重きを置く。それがポストバブルの、気分。

丁度、実家に帰る電車の中で、「モチベーション革命」という、割とうんざりくる本をほぼ読み終わっていた。(Kindle Unlimited で無ければ、決して読むことは無かっただろう)そこに書かれていたテーマは、ちょうど運転手が言っていたこととだいたい同じようなものだった。

僕の物事への見方とか、感想とかは、本の中で「最近の若い世代」と一括りにされているクラスタに近い。既存のシステムとして、こうあるべきと作られたものではなくて、新しく作り替えられていくもの、そちらに手を貸したいし、そちらで必要とされる人でありたい。成功の証にとっておきのワインを飲むよりも、サイゼリアのマグナムボトルを仲間と楽しく飲む方がよいのだ。

そんな事を考えながら、タクシーを降りた。


犬の写真なら、タイで沢山撮ったよな、と思ったけれど、噛みつかれるのが怖くてさっぱり写真が無かったよ。

韓牛なるもの

Hanwoo.

Photo: “Hanwoo.” 2016. Seoul Korea, Apple iPhone 6S.

やっぱり韓国では毎日焼肉なの?という今から考えれば無邪気で、いささか失礼な僕の質問に、いや、豚(サムギョプサル)が多いかな、と現地の同僚は答えた。それは、もう15年ぐらい前の話。

その頃食べた韓国の牛肉は、恐らくはアメリカからの輸入で、いかにも赤身の噛み応えを重視したU.S.ビーフだった。それは、今になって思えばの話で、当時の僕は韓国の牛肉を絶賛している。今読むと恥ずかしい話だが、それも15年の歴史。

そして最近、新たなる韓国ブランドの牛が台頭しつつある。恐らくは、和牛の遺伝子を受け継ぐという(どうやってそれを入手したのか?という話題にはあえて触れまい。。)噂に高い、韓牛というものを食べに行ってみよう。


とは言ったものの、韓牛はあまり流通が無いらしく、どこでも食べられる訳では無いようだ。ソウル駅から電車に乗って水原駅へ、さらにタクシーに乗って、やっとたどり着いた韓牛の店。見た目は、いかにも流行っていそうな焼肉屋、カボジョンカルビ。

店の佇まいは日本の韓国料理屋と同じ。いや、日本の韓国料理屋がよく本場を真似ていると言うことか。毎度お馴染みのチリチリパーマのおばちゃん達が、テキパキとお膳の準備をしてくれる。そうして、並んでやってくるおかずが、種類も多くて美味しい。

韓国企業に勤務経験のある友人は、水キムチを絶賛している。なんというか、目の付け所が玄人筋だな。あと、唐辛子まみれの沢蟹みたいなやつが、美味かった。

メニューを見ると、普通の牛に比べて、韓牛は別格の値づけになっている。しかし、このためにわざわざここまで来たのだから、迷わずオーダー。


韓牛、焼く前の見た目は、あんまり馴染みのない肉の色。少し黄味がかかってる。サシの入り方に、その祖先を感じる。これまたお馴染みの、でろーんと長いカルビの形でやってきて、チリチリのおばちゃんがテキパキと焼き、ひっくり返し、焼き、切り刻む。

切り刻まれた韓牛は、もう、いつもの韓国焼肉になっている。神戸牛が、アメリカでステーキにされるように、かように、文化は素材を圧倒するものか。

韓牛の味は、あんまり覚えてないけど、だいたい和牛かも。お会計は、二人で110,000 wonなので、まあ安くは無いが、高くも無いね。