ほんとにマニアック

Photo:福江島の入り江 2003. Nagasaki, Japan, Sony Cyber-shot U10, 5mm(33mm)/F2.8

Photo:"福江島の入り江" 2003. Nagasaki, Japan, Sony Cyber-shot U10, 5mm(33mm)/F2.8

五島列島は観光地としてはどうなんだろう。海は、綺麗だ。今日みたいな天気の良い日には、美しい色をしている。で、人はあんまり居ない。少なくと も、東京あたりから来ている人が居ない。ここからほど近いと言えなくもない屋久島が、マニアックな感じを演出しつつも一大メジャー観光地として成功してい るのに比べて、五島列島は、ほんとにマニアックなのだ。


僕たちは、福江島に一つある SATY で水着やらピクニックシートやらを買って、子供とお母さん達に占領されている、午後のフードコートでドーナツを食べた。いかにも観光客を相手にするような 店に行くよりは、こんな地元の普通のスーパーの方が、よほど安くてちゃんとしている。でも、ここではそもそも観光客向けの店なんて見あたらなくて、普通に スーパーしかない。多分、あんまり観光地ではないのだ。


ふらっと入った鮨屋の大将とかも、全然観光客慣れはしていなくて、やたらにネタがでかくて値段の安い握りは、ほんとに地方の漁師町のお昼ご飯という感じだった。

あるいは、海辺で写真を撮っていたら話しかけられた時も、地元の暇なオッサンの普通の世間話だったりした。
「なに?そのカメラ?」
「ん、CONTAX です」
「、、」

多分、変なニセモノカメラだと思われたに違いない。気まずいこときいちゃったな、悪いな、という感じで、話題は変えられていった。オッサンは、どこどこの店は現像が安い、という情報をくれたりした。ごめん、ここで現像はしないんだよ。

それにしても、今日は海の色が綺麗だね。

聖地より遙か

Photo: 2003. Nagasaki, Japan, Contax RX, Carl Zeiss Planar T* 1.4/85(MM), Kodak EBX

Photo: 2003. Nagasaki, Japan, Contax RX, Carl Zeiss Planar T* 1.4/85(MM), Kodak EBX

五島列島には、カトリック系の教会が沢山ある。なかでも、ステンドグラスが綺麗な教会があるらしい、だから行ってみることにした。

夏の盛りの恐ろしく暑い午後、周囲の道にほとんど案内もなく、トウモロコシ畑の中を散々行ったり来たりしてようやくたどり着く。教会は別に観光のためにあるのではない、だから分かりやすい表示もない。けれど、観光ガイドには載っている。

教会には、誰もいない。窓に強い日差しが当たり、締め切られた室内には熱気がこもっている。扇風機をつけると、空気が動いて少しだけ涼しくなった。


ステンドグラスは、多分に日本的な幾何学模様で線対称にデザインされている。その向こうには、蘇鉄の葉が揺れている。

ローマ、バチカンに実際に行ったこともあるけれど、やっぱり日本と全然違う文化と歴史があって、その上にはがっちりと、キリスト教が「生きて」 いた。選択としての宗教ではなくて、文化・文明の規定値としてのキリスト教。そこから、遙かに離れたこの場所に教会が建っていて、ステンドグラスがはめ込まれていて、イエスキリストの信仰を守る人たちが居る。遠い遠いこの土地で、その有り様は、やはりバチカンのそれと同じであり得るのだろうか。

ひっそりと薄暗い祭壇には、イエスキリストの十字架が掲げられている。こじんまりとした、人の生活を感じる祭壇だ。それにしても、ここは遠い。遙かに。

巨大なヘビ

2001. Yakushima, Japan, Nikon F100, AF ZOOM NIKKOR 35-105mm F3.5-4.5D, Fuji-Film RHP III

2001. Yakushima, Japan, Nikon F100, AF ZOOM NIKKOR 35-105mm F3.5-4.5D, Fuji-Film RHP III

下山の途中で、雨が降り出す。道の真ん中に、巨大で巨大なヘビがのたうっているのを見る。怪我をしている足首を、すこし捻る。

水の残りが少ない。使いもしない三脚のせいで、持ってくる水が減ったのだ。山頂にいたるまで、意外と暑くて、水分が足りない。これは、かなり失敗 だった。とにかく全部飲んでしまわないように、我慢する。途中で野生の鹿に出会った。これだけ動物が多いと、水庭に寄生虫が居る可能性もある。野生動物 は、単にカワイイとか、そいういう話ではない。

帰り道、下り坂の方がキビシイ。4時間かかって、日差しが弱くなりつつあるころ、ようやく麓の駐車場まで降りてきた。


ホテルの清潔なシーツの上で足を伸ばしていると、さっきまで登っていた山が嘘のようだ。太平洋にぽつんと浮かんでいる島、日が沈むと真っ暗になる。潮騒は遠い。

屋久島、けっこういいなぁ。