外国の記事一覧(全 202件)

武漢を過ぎ、デリーに飛ぶ

翼の上の月
Photo: “Moon” 2013. Wuhan, China, Richo GR.

ずいぶん前に武漢を通過した。ユーラシア大陸南側を飛ぶのは、初めての事だ。ここで飛行機が落ちれば、果てしの無い砂漠のただ中に取り残されるのだろう。

空から見る夜景の色は、国によって違う。中国の夜景は紅い。初めて見た北京の街は、街路灯に照らされる曲がりくねった道路が、のたうつ紅い龍のようだった。


武漢。夜の北京のように、巨大な紅龍が、闇の中をのたうっていた。それを過ぎて、また果てしない暗闇が広がっている。

こんなちっぽけな、そしてちりぢりな人間が、地球を壊そうとしているなんて、嘘みたいに思える。


飛行機は西に向かって飛ぶ。月は同じ位置に光りつづけている。翼の凍えた金属が、白銀に美しく輝いている。

今度の旅は、とても嫌な予感がしていた。飛びなれない方角に飛行機が飛んでいる事も、あるいはその目的地も、いままでとは違った緊張感と、ただならない世界に行くのだという、思いが有る。

そういう感触が、旅の本質なのかもしれないが、いつまでそういう事が出来るのかな、とも思う。デリーまでの時間は、映画二本で思ったよりも速く過ぎる。トム・クルーズが、衰えない姿で、滅びたニューヨークを走り回っていた。

リアルすぎるお坊さんフィギュア

Realistic monk figure
Photo: “Realistic monk figure” 2012. Bangkok, Tahi, Apple iPhone 4S.

僧侶が並んでいる。

露店の台の上に、それぞれに微妙にポーズも顔つきも違う、精巧な僧侶フィギュアが並べられている。一見してガラクタのラジカセや、ニセモノの骨董品が並ぶ露店街に、突然、桁違いにハイグレードな品々が。

ディアドロップの真っ黒な大門サングラスをかけた兄ちゃんが、店番をしている。

通常、僕は旅先でお土産の類をできるだけ買わないが、これはなんとなく買って帰らなくてはいけない気がしてしまっていた。でも、待て。どこに飾るんだ。もっと言えば、こんなにあげづらい、捨てづらい土産は無いのではないか。


タイに於ける、お坊さんのアイドルっぷりに、僕はかなり驚いていた。

朝、テレビをつけると高僧の説教をひたすら流す、「お坊さんチャンネル」に行き当たる。それも 2チャンネルある。きっと、自分の宗派とか、好みの路線というものがあるのだろう。

タクシーのバックミラーには、お坊さんブロマイドがかかっている。運転手に「それは、敬愛する僧なのか?」と訊くと、そうだと言う。バスの側面には、僧侶の写真が極彩色でプリントされている。


「ワット・ポーは今日は休みだよ!こっちに付いてきなさい」

という、あまりにもあからさまな客引きのオッサンを振り切って、王宮から数ブロック離れたワットポーに向かって歩く。タイにも客引きは確かに居る。でも、しつこくないというか、諦めが良いというか、「いらない」「乗らない」「興味ない」というと、たいてい意外とあっさり「あ、っそ」という感じで引き下がる。中華圏では考えられない引き際の良さだ。

空港からホテルまで来て、降り際にあと TBH1,000よこせ、という運転手に「なんだその料金は、聞いてないぞ」と、いささかの長期戦を覚悟で挑んでみたが、「ちぇっ、いいよいいよ」という感じですぐに引き下がってしまう。

受けて立つ気満々で言ってみたこちらは、拍子抜けしてしまう。根っこの所で、抑えが効いているというか、殆ど例外なくタクシーに飾り付けられている僧侶アイテムは伊達では無いのだ。


引き続き、ワット・ポーに向かって歩いている。露店が何百メートルにもわたって、続いている。遺跡からの出土品、と言いたいのだろう、小さい仏像を刻んだ石とも、汚れたテラコッタともつかないものをやたらに沢山並べている。とても手を出す気にはならないが、これを買っていく人も、やっぱり居るのだろうか?


そして、突然目に飛び込んできたのだ。

あまりにも、リアルな僧侶フィギュアが。目を疑う程の作り込みと、質感十分な仕上げ。これが人形である事を伝えたいために、わざわざ露店のオヤジを入れて撮影してしまった。

ちょっと買おうかな、と思った。値段が、実はそんなに高くない。でも、やめた。後日不要になった時に、どうやって処分すれば良いのか、やっぱり分からなかったからだ。

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Crane machine
Photo: “Crane machine” 2011. Las Vegas, NV, US, Ricoh GR DIGITAL III, GR LENS F1.9/28.

ラスベガスの南端にある、ショッピングモール。なんか、西友っぽい雰囲気というか、適度な場末感が漂っている。

ラスベガスの北の端には、ちょっと高級なショッピングモールが有る。プレミアムアウトレット、という名前に相応しい、少し高いブランドが揃っている。反対の南側、今居るのがもう少し日常的なモールだ。

北のプレミアム・アウトレットで普通に受け付けられた、ちょっとマイナーめなクレジットカードを出したら、なんだこれ、うちで扱えるのか??とちょっとした会議が開かれている。


寝間着代わりにも使えないようなえぐい柄のTシャツが、量り売りみたいな値段で売られ、通路には天然色ガムのガチャガチャとか、楽しいものが沢山。ちゃんとクレーンゲームも有る。中に詰まっているお楽しみキャラは謎すぎて、スポンジボブぐらいしか分からない。

頭に花が咲いてる謎キャラとか、気になるけど、僕はクレーンゲームが何よりも下手なんだった。