インドではナンを食べない

Naan and can of coke.

Photo: “Naan and can of coke.” 2013. Agra, India, Apple iPhone 4S.

「インドでは普通ナンを食べない、あれは日本のインド料理独特のものだ」

なんて、聞いていたけれど、普通にナン出てきてますけど。

きっとここは、観光客向けの高級な店なのだろう。だから、一般的にはあまり食べないというナンも、普通に出てくる。白と青で統一された店内は、清潔で涼しげ。出てくるカレーも、変な話、日本のうまいインド料理屋で食べる感じ。

ビリヤニも、マトンカレーも大変結構。値段が相当高いから、毒気が抜かれた洗練の料理。飲み物のコーラも、缶入りで安心。思えば、ここで気をよくして油断したのが良くなかった。インドのレストランと言ったって、別に普通じゃん、と思ってしまった。後から考えれば、そんなことは無かったのだ。インドのダイナミックレンジを、僕は見誤ったのだ。


ホテルの運転手は店の外で待っている。店の周りに屯している地元に人間(暇なのか、仕事が無いのか、そこに居るのが仕事なのか)と、なにやら楽しそうに話している。インド人のフレンドリーさというか、誰とでも超親しく話しちゃう感というか、その距離感は近い。

ウォンバット

Southern Hairy-nosed Wombat's nest.

Photo: “Southern Hairy-nosed Wombat’s nest.” 2016. Taronga Zoo, New South Wales, Australia, Apple iPhone 6S.

オーストラリアに来たからには、ウォンバットを見なくてはならない。そもそも、オーストラリアの動物園は、木もたっぷりしていて、人間が見やすいと言うよりも、動物が隠れやすいようにできているようであり、動物を見つけるのが難しい。その点は、いかにも「欧米」な感性で作っている。

さて、ウォンバットはさっぱり出てこない。塀から身を乗り出してのぞき込んでいると、

「あんたたち、暑いからウォンバットはみんな穴の中だよ!」

と、親切なオーストラリアのおばちゃんが教えてくれる。もっさりした茂みの下に巣穴があるらしいが、強日差しを避けて穴の中らしい。その場で 20分ほど粘ってみたが、やっぱり出てこなかった。

おばちゃん曰く、

「私の夢は、ウォンバットを飼うことなのよ。」

そんな話をして、翌日、僕の夢は、カピバラを飼うことだったのを思い出した。

俺は屋台でナンを食う

Holly cow on the road.

Photo: “Holly cow on the road.” 2013. Agra, India, Apple iPhone 4S.

「俺は屋台でナンを食う」

「俺はガンジス川の中で目を開ける」

と豪語していた友人は、ヨーグルトの中の謎の菌によって倒れた。親切なインド人が勧めたヨーグルト、それが鍵だ。だいたいに於いて、インド人は親切なのであって、そして時に過剰に親切だったり、お節介だったりする。


ミールス、つまりインドの定食を出すこの店は、ニューデリーのハイソなエリアにあって、欧米系のビジネスマンも来るような、ちょっと気の利いた地元のレストランだ。種類が沢山入っているミールスなら、何か食べられるものも含まれるだろうと思ったし、昨日アーグラーで運転手に案内された店の味は、なかなかだったので、正直油断もあった。そう、インドと言ったって、ちゃんとしたエリアなら、大丈夫なのだ、と。

9種類ほどの小皿を搭載して、ミールスがやってくる。さて、どう食べたものか。見た目ちょっと色黒に焼けていた友人は、食堂の店主に何らかの親近感を持たれたようで、(あるいは、インド人の何かを揺り動かす顔立ちなのかもしれない。ホテルのフロア担当のマネージャーにもやたら親切にされていたから)ミールスの食べ方をえらく丁寧に教えられていた。

このヨーグルトをカレーと一緒に食べるとマイルドになる。だいたい、そんな感じの事だったのだと思う。僕は、「絶対に」生乳の発酵製品を口にしまいと思って居たから、ヨーグルト類に手を付けることは無かったが、友人は言われるままに食べていた。


味は、それでも、ほどほどに旨かった(期待よりは旨くない)ように思う。店を出て、さてどうしましょうか?ん?ホテルに帰りたい?なんか顔色がおかしくなってる気がするけど、大丈夫?大丈夫じゃない。。

インドの洗礼は突然にやってくる。トイレから離れられなくなった友人をホテルに置いて、その午後から僕はインドを一人観光する事になった。ナンの屋台、などというものは、見かけ無かった。