同僚の親バレ

Photo: defocus 2009. Tokyo, Japan, Sony α900, Carl Zeiss Planar T* 85mm/F1.4(ZA), cRAW

Photo: "defocus" 2009. Tokyo, Japan, Sony α900, Carl Zeiss Planar T* 85mm/F1.4(ZA), cRAW

後輩の結婚式。

彼女の両親が結婚式を挙げた、同じ会場で、同じように。


配属された新人が一列に並んで挨拶する中に、彼女はいた。その頃は、今はもう会社に居なくなってしまった仲間達が沢山一緒に働いていたし、業界がこれから面白くなるところで、とても良い時代だった。

パワーポイントの箇条書きのやり方から教えた新人は、多分、彼女が最初で最後だったのではないかと思う。それが、プロジェクト管理までするようになるのを、ちょっとした驚きと共に、僕は眺めてきたのだ。


彼女のお父さんが挨拶に来た。ザ・銀行員という噂に違わぬ、ザ・銀行員。

「娘から、常々おはなしをいろいろ伺っておりまして」
それは、恐縮です。

「Web もよく見させていただいていて」
それは見なくていいです。

GR DIGITAL III を持って

Photo: autumn bank 2009. Tokyo, Japan, Ricoh GR DIGITAL III, GR LENS F1.9/28.

Photo: "autumn bank" 2009. Tokyo, Japan, Ricoh GR DIGITAL III, GR LENS F1.9/28.

いつもの飲み屋で、隣同士になったカメラな人と GR DIGITAL III いいよね、という話をして盛り上がる。最初は行儀良く、結構いろいろ改良されましたよね、という話をしている。そのうち、これはもう買うか!という気勢に なり、一週間後、テーブルの上に箱を並べて、「さて、いざ開けましょうか」ということになる。

かと思えば、寝ぼけながら携帯でアマゾンのレビューを見ていたら、One Click が発動して、翌日 GRD III が家に届いてしまった、という嬉しいような悲しいような人も居る。


そういうわけで、急激に GRD III 人口は増え、手に手になにかを撮っている。

僕の初代 GRD は、ただいまヨーロッパ方面に出張中で、比較ができないのだが、やっぱりちょっと大きく(高さにして、2mm 以内なのだが、人の手はそういうのは分かってしまう)なっている。でも、同じシリーズのデジカメとは思えないほど、撮りやすく、機敏に生まれ変わった。


朝起きたときから、今日はどこかへ行こう、と思うぐらいに気分が良い天気は、とても久しぶりで、目的地無く家からひたすら南へ南へと歩いた。(北へ北へと、西へ西へと、東へ東へは、やったことがある)

手には GRD III だけ。

川沿いに商店街を抜け、オフィスビルを抜け、タワーマンションの工事現場を抜ける。南に何があるのかは、google map を見れば分かる。でも、それはやっぱり見たことにはならない。下町が次第に、港湾都市に変わり、生臭い潮だまりの匂いと、トラックのディーゼル臭が鼻を突く。下町の気っ風と、港の気っ風は、やっぱり何か違うし、通りを過ぎていく度に、徐々に空気が入れ替わっていく。

そして、そういう文化のグラデーションを断ち切って、巨大なタワーマンションが楔を打ち込むように、建っている。ここ数年で急に増えた、大規模分譲のタワーマンション。脆弱な埋め立て地の上に、何の脈絡もなく巨大な街が出来上がっている。この気味の悪い景色もやがて、東京の風景となる日が来るのか。 マンションが出来上がる前に潰れてしまったのだろう、タワーから道を隔てて古びたカレー屋が、シャッターを閉じて埃の中に埋もれていた。


周囲は、海産物の倉庫街に変わった。路肩に停車中のトラックのバックミラーに、オレンジ色のツナギが、洗って干されている。南へ南へ歩いて、人工の大地は、荷揚げ用の小さな港で突然に終わっていた。東京湾は、複雑に入り組んでずっと先に続いている。

「関係者以外立ち入り禁止」の標識の手前まで行って、ゴミゴミした港を撮った。どこにフレームしたらいいのか、戸惑うぐらいにとりとめのない景色だった。僕は満足して、行き当たったスーパーで、グレープフルーツジュースと、豆腐を買って帰った。

柔らかい光

Photo: electrolux 2009. Nowhere, Japan, Sony α900, Carl Zeiss Planar T* 85mm/F1.4(ZA)

Photo: "electrolux" 2009. Nowhere, Japan, Sony α900, Carl Zeiss Planar T* 85mm/F1.4(ZA)

柔らかい光、ぬるい風。

光の粒子が、ファンに絡まり

けだるい模様をつくり出す。

午後が、続く。