月の明るい夜だった。
だいぶ遅くなって、僕は家までの道を歩いていた。梅林の切れ目の、少し開けた所に、十字路がある。ぼんやりとした街灯に照らされて、遠くからでも様子がよく見えた。
右の道から見たことのない白ねこが歩いてくる。スタスタ、という感じで、まっすぐに十字路を目指している。僕はかまわず歩き続けた。白ねこも歩いてくる。
そうすると、ちょうど僕と白ねこは十字路の真ん中で鉢合わせをした。おや、と思ってねこを見ると、何の迷いもなく、ごろんと横になって頭を差し出した。なでてみろ、と言っていた。
日中の熱気が未だ少し残る夜、白ねこの暖かい体温が手に伝わってきた。とても自然にそんなことをしている自分と、ねこが居た。 さわさわと梅の葉が揺れる音がして、膝を上げる。
振り返ると、白ねこの姿は見えなくなっていた。