カウンターで独りで飲んでいる。
良い店なのだが、一つだけ困ったことがある。マスターが五月蠅いのだ。まだ 30代中盤だと思うが、くだらない蘊蓄だの、勝手な解釈だのをえんえんとしゃべっている。でも、他に選択肢もないから、来てしまう。
僕は、もう本当に放っておいてほしくて、「独りで飲むときは、会話なんかしないで、ゆっくり飲むのが良いんですよ」としゃべりやまない彼に言い放つ。あっちに行けと。彼は、我が意を得たと言わんばかりに頷いて、「そうそう、そういう時は、本でも読んで飲むのがいいんですよ。例えば、村上春樹みたいな、ああいう内容の無いバカな本」
そのとき、僕が持っていたのは、村上春樹の「風の歌を聴け」で、よっぽど、「これか?」と取り出してやろうかと思った。
その店長も、どこかにとばされてしまい(雇われだったのだ、実は)、今は静かな店になっている。だから、安心して、揚げたマッシュルームを食べたり、ビールを飲みに行ったりすることが出来るというわけだ。
※写真を追加。文章の店とは違う、店です。(2020/8/22)