「行き先が、神津島に変更になりました」
というメールが探検部から送られて来たのは、僕がキャンプ道具一式を背負って、既に家を出た後だった。船が出るのは日の出桟橋。うーん、あんなところから伊豆諸島行きの船が出るのだな、と思っていたら、それはがせネタであった。
出港に遅れそうになって、60リットル近い荷物を背負って、息を切らせながら日の出桟橋に着いた僕を、夜の海を眺めながらロマンティックな雰囲気に浸っていたカップルが不思議そうに眺めた。
「えーと、船はどこ?」
竹芝桟橋を出発した(そう、日の出桟橋ではない)船は、難民船のように甲板にまで人を満載し、翌日の午前10時、最後の寄港地神津島に到着した。海 の色が、違う。淡いターコイズの波は美しいが、波頭は高く、外洋の荒々しさを感じる。島の地形は険しく、湾を望んで切り立った岩山がそびえる。
「必ず手すりつかまって下船してください」
と繰り返し注意されながら、大きな荷物を背負った、サーファーやらキャンパーやらが、揺れるタラップを降りていく。家で荷造りをしている時には、不安なぐらい荷物が巨大になって困惑したが、こうして見れば僕の背負っているのは比較的小さなザックに見える。
桟橋に降りると、島に来たときに感じる、島そのものの力みたいなものに触れる気がする。蝉が一気に鳴いて、船から下りた乗客は眩しそうに水面を眺め、慌てて帽子を被る。風が強い。
「釣れそう?」
と釣り隊長に質問が飛ぶ。明日の朝食は、今夜の釣果にかかっている。海は澄んでいるが、魚群までは見えない。
ここは夏のまっただ中だ。