今年の桜は客観的に言って凄い。

Photo: 開花 2008. Ricoh GR DIGITAL, GR LENS F2.4/28.

Photo: "開花" 2008. Ricoh GR DIGITAL, GR LENS F2.4/28.

変な言い方だが、今年の桜は客観的に言って凄い。一気に開花したせいかしら?と言っている人も居たが、なんにしても花が少し大ぶりで、淡い白色の透明度が高い。嬉しい人も、悲しい人も、普通の人も、忙しい人も、暇な人も、今年はちょっと見ておいた方がいい。


毎年、僕は千鳥ヶ淵に撮りに来ていて、まあ、今年はちょっと早く行ってみようと思い立って、8時少し前に九段の駅に降り立った。朝の千鳥ヶ淵には、 驚くぐらいのカメラ軍団が溢れていて、東からの太陽の光を受ける斜面に、一斉にレンズを向けていた。朝の光を捕まえるのは、撮影の基本、と言うわけだ。

レンズを向けて直ぐ気がついたのは、花の色の強さ。元々、色らしい色のない桜の花だが、透明感が違う。毎年来ていると、だいたい絵になる場所は分 かってしまっていて、まずは覚えのある所を撮ってみるのだが、今年は花の密度が高くて、なんというか豪華な感じになっている。そんな風に感じたのは初めて で、今年はちょっと凄いなと思う。


朝一のカメラ軍団の時間が終わり、普通の観光客の時間が来て、千鳥ヶ淵は一気にざわめきだした。さっきまで、沈黙したまま立っていた警備員が、ハンドマイクを手に、立ち止まらないように指示を始める。堀のボート屋が営業を始め、ビールや簡単なつまみを売る即席の屋台が店を開ける。もうそろそろ帰り時 か。

千鳥ヶ淵から戻って、近所の堤を歩いていると、誰も居ない川縁に桜が静かに咲き誇っていた。今、日本中でこうして桜の花が咲いていることが、少し不 思議にも思える。途中、一組の老夫婦が、花の下に座って、水筒のお茶で一休みしていた。僕は背負っていたカメラを出すこともなく、その景色をただ眺めなが ら、下流に向かって歩いていった。

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