工業団地を抜けて、海岸まで来た。車を降りて、僕はContax T2を取り出し、堤防によじ登った。海は時化で、沸騰したように白くなっていた。
こんな景色を撮りたかった。コンクリと、水と、綺麗な景色ではない。でも、嘘がない。
消波ブロックすれすれまで近づくと、波の咆哮が足下から聞こえた。空気が海水の粒子でベタついている。波のリズムが深くなり、おおきなヤツが来そうな気がする。波はとても大きくて、下手したら死ぬんだろうなと思った。
ファインダーの中、一面に泡雪のような波が砕け散った。綺麗だ、とシャッターボタンを押した一瞬。頭の上から、切るように冷たい海水が降り注ぎ、そして何も聞こえなくなった。
バッシャーーーッ。
「うぎゃーーーーーーーっ、波がぁーーー」
鹿島に行ってきた。そして、こんな写真が残った。(カメラが海水まみれ)