「君たちと一緒に飲もうと思って、買ってきた」
3人で炬燵を囲む。沖縄硝子のジョッキが揃いで 3つ。飴色の胴体と、碧色の把手が解け合った、不思議な姿。冷えたビールを注ぐと、生き物のように輝く。碧色の把手が、砂漠に立つサボテンみたい。僕は、ふと、そんな事を思う。
ビールにテキーラを入れるのは、友達が 神戸のバーテン に教わった方法だと言う。ビールの苦みが不思議と消え、竜舌蘭の甘い匂いが心地よい。テキーラに限らず、ジンでもラムでも、好きな蒸留酒を入れると、ビール嫌いにも美味しく飲めるらしい。
「眠れないときに、いい」
でも、その時僕はとても眠くて、ジョッキを干した後、あっという間に寝てしまった。夜明けまで頑張るつもりらしい 2人の話し声が、やがて遠のき、そして何も分からなくなった。
追伸:目覚めは、完徹した友達が弾く、エレキギターの音でした。
注1:竜舌蘭はテキーラの主原料。本当にその匂いか?と聞かれると自信ないが、まあ、雰囲気。
注2:こ‐たつ【炬燵・火燵】床ゆかをきって炉を設け、上にやぐらを置き、蒲団(ふとん)をかけて暖をとるもの。また、床を切らずにやぐらの中に火を入れた置き炬燵もある。季語:冬。「電気―」[株式会社岩波書店 広辞苑第五版]