Web は、表現の道具であって、表現そのものではない。だから、まずは誰にでも見やすい Web であるべきだ。最近、使用するブラウザをちょっとマイナーな Opera に変えてみて、改めて、そんなことを考えた。(このページも、Opera 用にちょっと直すはめになったのです)
僕がこのページのデザインを決めるときに、まず念頭に置くのは、手があまり自由に動かない友達のこと。要求されるクリック数・カーソル移動量は極力 少なく、リンクの場所は明確に。操作すべき場所は左側に集めて、、。そんな配慮と工夫は、もちろん手が自由に動く人にとっても快適なはず。
あるいは、字の大きさ。Web の情報の基本は文字、人によって快適に感じる大きさも、使用フォントも、アンチエリアシングの有無も、まるで違う。だから、羊ページでは、フォントに関し ては、一切、絶対値による指定を行っていない。大きさや行間などは、全て、相対値で指定し、使用フォントもユーザーの設定が適用される。ただし、この場 合、どんなユーザー設定の状態に於いても、デザインやレイアウトを維持できるように注意する必要がある。
Web というのは、建築に似ている。デザインは、機能性と表裏一体であり、美しい Web デザインは、美しい機能性と密接に関係している。建築にはアクセシビリティーという概念があるが、これは Web にもそのまま当てはまる話である。幸いにして、個人が行う程度の Web サイトの構築は、現実の建築に比べれば遙かに少ないコストで、いろいろなことができる。手間さえ惜しまなければ、様々なブラウザでの閲覧をサポートさせた り、多様なユーザー設定に対しても見た目の美しさを保つようなコーディングをすることができる。
まずはその手間をかけてから、自分なりの表現をしてはどうだろうか。ロッククライマーしか入れないような建築にしてしまうのか、あるいは、いろいろな人が、自分なりのアプローチでくつろげる建築にするのか。それは、ひとえに管理者の手腕にかかっている。
注1:羊ページは、Lynx から Opera に至るまで、多種のプラットフォーム上の多種のブラウザから閲覧されることを前提としているが、限界もある。特に手元の環境では、Mac からの閲覧をチェックできないので、もしおかしかったら教えてください。
注2:「ユーザー CSS で強制的に設定すればフォントは好きに変えられる」という意見もあるかもしれない。しかし、実際には、文字を拡大してもちゃんと見られるように最初からつくっておかないと、レイアウトが崩れて閲覧は難しい場合が多いと思う。
注3:羊ページでは、読みやすいという理由から、文字の大きさに対する相対値で行間指定をしている。ところが、「行間が空いていると読みにくい」という人 も居たりするので、やっぱり難しい。今のデザインは、2年以上かけて改良してきたものだが、それでもまだ問題は残っている。
注4:「(一部のブラウザで)ウインドウ幅が狭いときに、写真と文字が重なってしまうのは回避できないのか」とのご指摘があります。散々、試行錯誤しているのですが、現状、回避策は見つかっていません。申し訳ないです。
注5:マルチプラットフォームサポートには、技術力と知識が必要な場合もあり、閲覧対象環境が狭いからと言って、一概に非難できるものではないと思ってい る。実際、W3C 勧告に従ったから良いというわけでもなく(ブラウザ毎の実装状況があまりにも違う)、実地にテストしないといけないので、とにかく難しいし疲れる。
注6:本稿は、特定のサイトについて非難しているものではありません。また、サイトのデザインポリシーに関して、何ら意見を押しつけるものではありません。