去り際に、「ウイスキーお好きなんですか? 、、またどこかで」
と言った女は銀座の女で、その日、僕はバーボンを1杯とシナトラを飲んでいた。
僕の隣の席に座っていた彼女は、バッグから何かを落とし、僕は一緒に探した。そんな所作も洗練されて、銀座に相応しい、いい女。僕はいたく感心した。
1杯目からウイスキーをストレートで飲んでいた彼女とは、なんとなく友達になれそうな気がした。が、何かが僕を止めた。それは、プライベートな酒を邪魔してはいけない、ということだったのだと思う。
「銀座の女性は、仕事柄お酒が嫌いなってしまう事があるんですよ。だから、自分でゆっくり飲みにくるんです。」
バーテンダーにそう教えられて、やっぱり話しかけなくて正解だと思った。あの日以来、彼女には会っていない。