客もひけて、静かになった店内でなにかの社長だという客のオヤジが、つまらない繰り言をえんえんしゃべっている。僕はそういうヤツに対するサービス 精神が皆無なのであって、冷たくあしらう。時として、そういう態度が新鮮らしく、気に入られることもある。困る。こっちは泡盛の杯を片手に、資料を読んで るんだから放っておいて欲しい。
そうこうするうちに、今年最初の秋刀魚が出てきた。まるまるしていて、しかも走りだから脂が軽い。
薄い皮と、ふっくらした身の間に、溶けた脂が流れている。本当の焼き魚は、身を焼くのではなくて、脂を溶かすのだ。資料をカウンターに置いて、秋刀魚に向き合う。社長殿はまだなんかしゃべってるが、もう、耳に入らないよ。
注:もちろん、普通に話す人は全然イヤじゃない。友人が、「とうとう俺らも飲み屋で知り合いをつくる年になったか、、」と感慨深げに言っていたので「笑笑で学生と殴り合ってるよりいいだろ」と答えておいた。