「この前、初めて鹿を食べたんですよ」
なるほど。
「そしたら、凄く美味しくて、それ以来鹿を見る目が変わっちゃったんです」
はあ。
「テレビとかで鹿がいても、じゅるじゅるって感じです」
、、。
ということで鹿を頼んでみた。
確かに鹿はうまい。脂の少ない野の物だから、バクバク食べてもなんとなく体に良いことをしたような気になる。それに、こういう食べ物は、人の体を芯から元気にする。
彼女が動物としての鹿を、どんな目つきで眺めるのか僕は見たことがないが、目の前に出てきた鹿の輪切りを幸福そうに眺めている様は、見ていて嬉しくなる感じだった。
まあ、僕は動く鹿の姿を見ても、「美味しそう」とかは思ったりしないが。