ヤンキーと木

朝、いつものように森の中を通って(悪かったな、近所に森があるんだよ)バス停に向かって歩いていると、遙か遠くでドーンという音がした。それは丁度、木が倒れるような音だった。

もし、誰も居ない森の中で木が倒れたとしたら、果たしてその木は本当に倒れたといえるのか?そんな哲学だか、科学だかの命題があったような気がしたけれど、その日、確かに木は倒れたのであって、しかも通りがかりのヤンキー車に突き刺さっていた。それが事実だ。


さて、現場に行ってみると森を抜ける狭い道路は渋滞になりつつあった。道路沿いの割と太めの木が一本、見事に折れて道路に横たわっていた。そして、その先端は、まさに、通りがかりのヤンキー車のボンネット表面に深刻なダメージを与えているようだった。

ショッキング・ライト・ブルー・マイカ的カラーリングの、ヤンキーミニバンの脇で、オーナーのヤンキーが狂ったように叫んでいる。

「ちっぃきしょぉぉぅー、なんだよこりゃぁー、ふざけんなこぉらぁー」

しかし、相手は木。なにも答えない。堪えていない。しかし、ヤンキーとしてもいまいち引っ込みが付かないらしく、木に絡むのをやめようとしない。木の方も、倒れてしまった以上は、もはや引っ込みがつかない。あっ、そんなことを、、。

ガスッ!!

蹴ったところで、足が痛いだけなのに、、。


あれだけの木が走行中に倒れてきて、ボンネットだけで済んだことに、ヤンキーはむしろ感謝すべきじゃないかな、、。それにしても木が倒れるとは、春の珍事かねぇー。などと考えつつ、さっさと通り過ぎた。

注:本稿はヤンキー及び、その関係者を揶揄するものではありません。

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