チェキラご飯

Photo: 2000. Suzuka, Japan, Nikon F100, Zoom Nikkor 35-105mm F3.5-4.5D, Fuji-Film, F.S.,

Photo: 2000. Suzuka, Japan, Nikon F100, Zoom Nikkor 35-105mm F3.5-4.5D, Fuji-Film, F.S.,

朝、5時。
疲労と、寝不足と、寒さは、僕たちの頭から完全に、正常な判断力を奪っていた。晩飯に味噌まみれの松阪牛の焼肉を、たらふく食べているから、腹は減っていない。

しかし、コンビニで「材料」を買ってきてしまった。明け方の、名も知れぬビジネスホテルの一室で、調理が始まった。


料理名:チェキラご飯
ルール:残さないこと
材料:コンビニの白飯(チンしたもの)、チェキラ! リズム&ブルースショウユ(もしくは、チェキラ!ソウル・トンコツ・フィーバー)

作り方:
1. チェキラ!をお湯で戻します。このとき、液体スープの元は入れないこと。
2. お湯を捨てます。
3. 白飯をのせ、上から付属の液体スープの元をかけます
4. よくまぜてお召し上がり下さい


ここは三重。我々は、いったい何をしているのであろうか。

注1. 決して残飯を撮影したものではありません。
注2. ホントにつくって、どうなっても知りません。

子供の頃の夕暮

Photo:2000. Kobe, Japan, Nikon F100, 35-105mm F3.5-4.5D(IF), Fuji-film.

Photo:2000. Kobe, Japan, Nikon F100, 35-105mm F3.5-4.5D(IF), Fuji-film.

夕日の沈む頃、空に電線と団地の階段が交差する景色。それは、僕に子供の頃の夕暮れを思い出させた。

家への帰り道、いつも団地の中を通る坂道を歩き、走った。

あの頃、未来への不安はなかった。失われるなんて、思いもよらないことだったから。


大人になれば、生きることは楽になるのだと思っていた。少なくとも、もっといろいろな事が分かるようになるのだと思っていた。

でも、どうやら、違うらしい。最近の複雑な世の中では、自分の姿を見失うのはあまりにも簡単。

佐賀町エキジビット・スペース

Photo: 2000. Sagacho, Japan, Nikon F100, 35-105mm F3.5-4.5D, Agfa

Photo: 2000. Sagacho, Japan, Nikon F100, 35-105mm F3.5-4.5D, Agfa

呆然。

観客は所在なく歩き回り、床に目をやり、少し不安そうに窓辺に身を寄せる。

「佐賀町エキジビット・スペース」最後の展示は「ドキュメント佐賀町・定点観測 1983-2000」。入り口で 500円払い、今までの展示物の年表を印刷した紙を一枚受け取る。そして、ギャラリーに入る。室内が、眩しい。


種を明かせば、展示スペースには何一つ展示されていないのだった。全ての展示物が撤収され、がらんとした空間だけが広がっている。

この場所の本質が、まさにモダンアートの展示「スペース」であったことを、「展示」している。その展示を前にして、とまどい気味の観客達は、それでもなにかを持って帰ろうと、床を触ったり、柱の写真を撮ったり、窓の外を眺めたりしている。

僕はと言えば、これで 500円はちょっと高いなぁ、などと思いつつ、面食らっている観客達を順に追いながら、シャッターを切った。


美術学校の学生らしき 3人組が、なにも無い床に携帯電話を置き、Nikon のデジカメで写真を撮っていた。携帯のディスプレイが映し出す時計が、残り少ない世紀末の時間をカウントしていた。


注:現在、「佐賀町エキジビット・スペース」は閉館している。