行くぞポチ

Pochi dog in Tainan.
Photo: “Pochi dog in Tainan.” 2015. Taipei, Taiwan, Richo GR.

「おう、行くぞ、ポチ」

台南にもポチは存在する。海外で柴犬を見ると、なんか頑張ってるなぁという感じがしてしまう。


そういえば、ふらっと入った鹿児島の市立美術館に渋谷のハチ公の原型の展示があって驚いた。初代ハチ公像は戦中の金属供出で溶かされてしまい、今のはオリジナルの作者である安藤照の息子 安藤士の手による、二代目なのだそうだ。

安藤士の代表的な作品っていうのは、東京タワーの下にある南極の犬がいっぱい居るアレ。犬に縁がある人なのか。かのメジャー待ち合わせスポットにはそんな歴史があって、なぜかその原型が鹿児島に置かれている。


そして、ここまで書いておいてなんだが、ハチ公は柴犬ではないんだそうだ。ハチ公は秋田犬、知らなかった。どこが違うのか、よく分からないのだが、大型犬が秋田犬で小型犬が柴犬であると。考えてみたことも無かったが、大きさ以外は見た目はそっくりじゃないのか。

そうしてみると、台南のポチ、うーん、君はやっぱり柴犬だな。

カブトムシ氏 去る

来たときと同じように、カブトムシ氏は実に勝手に、去って行った。

少し前からひっくり返ると、なかなか自分で起きられなくなってきていたし(小枝で転倒防止にはだいぶ工夫はしたのだ)、バナナもあまりうまく食べられず、水分のを多いブドウをよく食べていた。だんだん、寝ている時間が増えていった。

会社から帰ったある日、好物のバナナとブドウの上で、じっとうずくまっているカブトムシ氏が居た。ひっくり返ってもがいていたら困るなと思って居たから、ホッとしたけれど、もう目に光はなくて、いつもの寝ている様子とも違っていた。複眼に光も何も無いと思うのだが、なんとなく分かるのだ。


子供の頃、蚊取り線香を横切ったカブトムシがひっくり返ってしまい、泣く泣く埋めたら、小一時間後に自力で這い出てきたトラウマというか鮮烈な思い出が僕には有って、こいつらの生命力にはそうそう騙されないと思い、一晩そっとしておいた。

翌朝、やはり同じバナナの上で、彼はうずくまったまま、静かにしていた。持ち上げてみると、驚くほど軽い。そして、少しも動かなかった。眠っているようなカブトムシ氏を、敷き詰めた小枝の上に戻して、蓋を閉じた。

4ヶ月30日、子供が飼ったらなかなかこんな長期間にはならないだろう。まさに、「大人飼い」。季節外れの国産ブドウを探すのはえらく面倒だったが、勝手に来て勝手に去って行った住人が居なくなるのは、やはりさみしい気がしたのだった。