オリンピック

オリンピックに興味もないし、見るつもりもない。

でも、開会式に向けての、言論統制・独立運動への弾圧を見ていると、これは 1936年のベルリンオリンピックの再来なのかなとも思う。一党独裁国家が、その威信をかけて開くオリンピック。その影では、民族浄化が行われており、そ れを黙認し、あまつさえ大手を振って開会式に参加する周辺国。同じ事を、人類は繰り返しているのか。


アジアの途上国が急速に発展する様を、あるいは東京オリンピックと重ねる人も居るかもしれないが、それとは、どこか、そして致命的に異なっていると、僕は思うのだ。どうして、屈託もなくあのイベントを楽しんで観られるのか、僕にはちょっと共感できない。

もしかして、来るべき未来、子供の世代にこう聞かれるのかもしれない。「その時、あなたは何をしていたのですか?」と。

腐った根

夜回り先生は死にかけているらしい。だから、テレビにも出ることにしたらしい。自分は死のうとしている、生きたいのに死のうとしていて、そこに「死にたい」という電話を受けると、こんな僕でも腹が立つことがある、そう言っていた。

思い出は、忘れるか、闘うしかないと言っていた。若ければ、植物を植え替えるようにして、そういうことも出来るんだと思う。でも、悪夢のような思い出も、もう他に換えはないので、それを捨てるのは植物の根っこを取るのと同じ事。幹が大きく育ってから、根をとってしまったら、木は倒れてしまう。だから大木を、挿し木にはできない。そんな気もする。


そんな事を言うと、ある種の状況では、結局救いが無い、希望が無いと思っているように受け取られるかもしれないが、実際そう思っているのだ。

GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊 2.0

GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊

気がついたら、攻殻機動隊 2.0がもう封切りされていた。無理矢理仕事を切り上げて、19:00からの回に間に合わせた。

オリジナルはかなり観ているので、その違いを気にしながら観てみる。パンフレットが公開当時のものと、2.0のハイブリッド版になっていて、記念品の類は買わないというポリシーに反して購入してしまった。

東京での上映は新宿ミラノ座の1館のみ。仕事で来たことはあったけれど、中にまで入るのは初めて。外観は結構年期が入っていたが、中のシートやスクリーンは新しくされおり、通路も広くて申し分ない。最初客の入りは少なくて、単館上映でも厳しいものだとおもったけれど、開演直前までにかなり席は埋まった。アニメーションだが、子供の姿は無く、スーツ姿の人、あるいはデザイン系げな私服の人など、客層はちょっと変わっていた。


全体としては、吹き替えは2.0がかなり良い。特に、人形遣いのキャスティングが変わって(クロトワの人→クシャナの人)、台詞の奥に茫洋とした恐怖、のようなものがより感じられるようになった。清掃局員は千葉さんの方が違和感が無い。他は、1.0と同じキャストの人が多く、違ったアレンジで楽しめる。

全てCGでリメイクされているシーンは、そんなには無い。(気がついていないのかもしれないが)当該のシーンは、やはりかなり違和感がある所も多い。冒頭のビルからのダイブのシーン(攻殻で一番有名なシーン)や、フローターで海面に浮き上がるシーンは、やはり前後のセルアニメーションからは浮いてしまっている。逆に好印象を持ったCGシーンもある。ラストの都市を見下ろすカットは、2.0がより元のイメージに近いし、メッセージがクリアになった。

セルとCGのブレンド、という点では、イノセンスほどの完成度ではないが(描き直しではないのだからそうだろう)、オプティカル系の新しい処理(信号機、フロントガラスへの街灯の反射、赤色灯など)や、窓ガラスの水滴処理などはうまく融け込んでいて、きちんと2.0になっている。

その他、台詞も、筋も、音楽も(新録が入っていると思うが)13年前と殆ど変わるところは無い。そのメッセージ性も同じだが、あるいはより明確になったかもしれない。技術の進歩の果てに訪れるであろう未来に対する希望と絶望、その両端で揺れていた13年前のオリジナル。

2.0もまた、同じ場所で揺れている映画だが、その希望にも、絶望にも、地に足が付いた。ネットもまた、人間がつくり出す以上、その限界はあり、制約はあるのだという、そういう確信が、あるいはこの映画をCG処理の進歩以上に変えたのかも知れない。