2025年11月の記事一覧(全 5件)

狩野尚信 山水図屏風

Photo: “Saru Machi Cafe.”
Photo: “Saru Machi Cafe.” 2025. Tokyo, Japan, Apple iPhone 14 Pro Max.

荏原 畠山美術館。入り口から建物を周りを囲む庭は立派で、そこまでなら無料。こんな場所に、こんな立派な私営の美術館がある、東京の文化資本の凄さ。

国宝も含む展示のクオリティはとても高いが、中でも狩野尚信「山水図屏風」(ざっくりな名称なのか?)の一双を、かなりの時間眺めていた。床几台に座って全体をボンヤリ眺めたり、最近買ったZeiss Mono 4X12T*(とても良い)で筆運びを見たり。


狩野尚信は狩野探幽の弟。探幽の名前は、多くの人が知っているから、それを軸に〜の弟とか、〜の孫とか言われるのは仕方ない。それは、後世の事だろうか?リアルタイムでは、どのように認識されていたのだろう。鍛治橋とか、浜町とか、現代の地理感覚でも認識できる、徒歩圏の狭い地域に江戸狩野派が住まっていた時代というのは、どんな感じだったのか。

くどくど解説が書いてあるわけでは無い。基本、自分で眺めて、自分で感じるしか無い。

画面全体が、水に満ちた構図というのは分かる。しかし、これが川なのか、湖なのか、海なのか。標高はどうなのだろう。水表の向こうから、太陽が昇りつつあるようにみえる。馬に乗った師匠と弟子が配される構図は、定番なのだろう。

立ちこめた朝霧の向こうから、岩礁が、やがて目に入ってくる。村の中には急流が流れている。とすれば、ここは山奥だろうか。しかし、水面は広く、彼方に船のマストが見える。これは漁船だろう、とすれば、カルデラ湖のようなものか、あるいは中国の険しい山中を想像して書いたのか。南宋画の世界観だろうか?

ずっと見ていると、日が昇りいろいろなものがカタチを持って見えてくる。音だけがしていた急流がカタチを持って現れ、それを渡ろうとする村人の生活が立ちあらあれてくる。向こうには、立派な寺院のような屋根が見える。遠くの峰も見えてくる。霧が晴れると一日がはじまっていく。そういう世界だろうか。分からない、が、正解も別に無いだろう、。

最近は、日本画が良いなと思う。自然に体の中に入ってくる感じがある。あるいは、小さい頃に祖父母の家で見ていた、古びたふすま絵の様子を、脳が想起しているのかもしれない。


ちなみに、併設のカフェでは、(タイミングによるのだろうけれど)凄く手の込んだケーキを食べられた。

おるね

Photo: "Spotted."
Photo: “Spotted.” 2025. Tokyo, Japan, Fujifilm X-Pro2, Fujifilm M Mount Adaptor + Carl Zeiss Planar T* 2/50 ZM

芒の隙間から覗くと、おるね。

オキちゃん 2023

Photo: “Dolphin Show.”
Photo: “Dolphin Show.” 2023. Okinawa, Japan, Apple iPhone 14 Pro Max.

「美ら海水族館は行った事ある?」

「いや、ないですね、初めて」

それはそうだ。21世紀に入って、沖縄には出張でしか来ていないのだから、水族館には行けない。行けなくも無いが、行った事は無いのだ。純粋な旅行として初めて沖縄に来て、地元民のアドバイスに従って近くのコンビニで割引チケットを買い(これはお得な情報だった)、初めて美ら海水族館のゲートを潜る。初めての筈だ。初めてなのか?

来たことは無いはず、しかし、来たことがあるような気がする。なんだろう?この既視感と、何にも見覚えの無い感じ。


イルカショーを宣伝する立て看板の「オキちゃん」という単語を目にしたときに、突然いろいろなものがつながる。僕は、オキちゃんを知っている。オキちゃんショーを見たことがある。しかし、この神殿のようなテーマパーク然とした美ら海水族館の建物も、舞浜のあのリゾート施設のようなエントランスも、何もかもがまったく記憶にない。どういう事だ?

このオキちゃんは、記憶にあるオキちゃんなのか?しかし、あのオキちゃんに僕が会ったのは、もう25年も前の話ではないか。イルカはそんなに長生きするのか?

実際、オキちゃんは25年前に見たオキちゃんだった。僕は別の世界線を生きていたわけではなく、オキちゃんは日本で飼育されている中では最長寿のイルカとして、いまだ元気なのだった。そして美ら海水族館は、国営沖縄記念公園(通称:海洋公園)の中の一施設。どうりで、見覚えがないが、来たことはあるわけだ。1995年には、既にそこに海洋公園があり、オキちゃんが居て、その後2002年に美ら海水族館が建設されるのだ。


1995年、僕は校外実習で沖縄に行き、ギチギチのスケジュールに嫌気が差して、息抜きとして皆で海洋公園に行った。そして、若かりしオキちゃんのショーを見た。オキちゃんは、その時からスターとして高くジャンプしていた。知らないはずなのに、知っている。見覚えの無い場所なのに、知っているイルカがいる。そういう午後。