旅先に持っていく音楽は、自分が本当に聴きたい音楽。
その夏、南の海を見ながら、僕が聴いていたのは彼女の歌だった。その時、僕はまだカセットテープのウォークマンを使っていた。悲しい歌が多かった、でも落ち着くことが出来た。
熱に浮かされたような季節で、僕は今よりも少しだけ若く、そして、脆かった。彼女の歌の脆さが、僕を惹きつけたのだと思う。
今度の Cocco の、最後のアルバムには、光が入っている。歌は、もう悲しくない。
歌うことが、自分を癒すための何かだったとしたら、その意味での歌というのは、彼女にとっては、もういらない。そういう、ことかもしれない。
いつか、また、別の形で彼女に会えるといいなと思う。