クリーンエネルギー

Photo: 2001. Kashima, Japan, CONTAX T2 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/38, Fuji-film

Photo: 2001. Kashima, Japan, CONTAX T2 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/38, Fuji-film

電力事業というのは、第一に安定供給。必要な量を、確実に供給すること。それが全てだ。在庫切れは、許されない。

さて、風力とか太陽光線とか、そういう「クリーンエネルギー」というのは、まだまだ安定供給のニーズを満たせない。エコロジーブームに乗って、注目 されてはいる。でも、実際に電力需要を賄えるわけではない。言ってみれば、電力会社の客寄せパンダみたいなものだ。しかし、最初は電気そのものがサーカス の見せ物であり、客寄せのためのアトラクションだったことを思い出した方がいいだろう。


目の前に巨大なプロペラ、ここはカリフォルニアではない。鹿島の海辺には、デンマーク製の風力発電機が2基建っている。目を開けるのが辛いほどの潮 風に、直径48mの羽根が、ゆっくりと回る。流体力学と軽量化素材の進歩が生んだ構造物。風力発電にかけては、北欧勢が強い。フィヨルド周辺の過酷な自然 環境は、言ってみれば豊富なエネルギー源であり、その利用にかけては一歩先んじている。

そもそも、風車は3000年の歴史を持ち、人類にとっての古馴染みだ。そのお馴染みのテクノロジーが、再び人類の生活を支える日が来るかもしれない。

通天閣

Photo: 2000. Osaka, CONTAX T2 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/38

Photo: 2000. Osaka, CONTAX T2 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/38

通天閣は、独特だった。つまり、それは流行らないデパートの屋上のようであり、くたびれた東京タワーのようであり、そして、結局はそのどれにも似ていなかった。

通天閣から見下ろすくすんだ町並には、下町の猥雑さと日常の倦怠が同居し、およそ観光地らしからぬ佇まいを見せていた。


もちろん、通天閣というのは大阪で著名な観光地だ。だから、平日の午後4時過ぎという妙な時間に行ったにもかかわらず、展望台に向かうエレベータには行列が出来ていた。(休日は1時間以上の待ち時間になる)

行列に並んでいると、妙な人たちが目に入った。エレベーターを待つフロアで、何人もの人がひたすらテレビを見ている。工場労働者風のおっさんとか、 買い物途中のおばちゃんとか、そんな感じの人たち。彼らは別にエレベーターを待っているのではない。フロアの真ん中に据えられたテレビを、ひたすら見てい る。

そのテレビのチャンネル主導権は、リモコンを持った切符売り場のおっさんにあるらしかった。彼は観衆の嗜好などお構いなしに、あちこちチャンネルを 変えた。コロコロ変わる画面を、その恐ろしく暇そうな聴衆がじっと見ていた。(ちなみに、この待合いゾーンみたいなところまでは、入場料無料)


ようやくたどり着いた展望台から、薄曇りの市街を見下ろしていると、なんか看板がこっちを向いている。なんだあれは、ラブホテルの看板が、天空に向けて設置されている。

通天閣展望台狙いのピンポイント広告か、、。

鹿島工業団地

Photo: 2001. Kashima, Japan, CONTAX T2 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/38, Fuji-film

Photo: 2001. Kashima, Japan, CONTAX T2 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/38, Fuji-film

工業団地を抜けて、海岸まで来た。車を降りて、僕はContax T2を取り出し、堤防によじ登った。海は時化で、沸騰したように白くなっていた。

こんな景色を撮りたかった。コンクリと、水と、綺麗な景色ではない。でも、嘘がない。


消波ブロックすれすれまで近づくと、波の咆哮が足下から聞こえた。空気が海水の粒子でベタついている。波のリズムが深くなり、おおきなヤツが来そうな気がする。波はとても大きくて、下手したら死ぬんだろうなと思った。

ファインダーの中、一面に泡雪のような波が砕け散った。綺麗だ、とシャッターボタンを押した一瞬。頭の上から、切るように冷たい海水が降り注ぎ、そして何も聞こえなくなった。

バッシャーーーッ。
「うぎゃーーーーーーーっ、波がぁーーー」

鹿島に行ってきた。そして、こんな写真が残った。(カメラが海水まみれ)