通天閣

Photo: 2000. Osaka, CONTAX T2 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/38

Photo: 2000. Osaka, CONTAX T2 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/38

通天閣は、独特だった。つまり、それは流行らないデパートの屋上のようであり、くたびれた東京タワーのようであり、そして、結局はそのどれにも似ていなかった。

通天閣から見下ろすくすんだ町並には、下町の猥雑さと日常の倦怠が同居し、およそ観光地らしからぬ佇まいを見せていた。


もちろん、通天閣というのは大阪で著名な観光地だ。だから、平日の午後4時過ぎという妙な時間に行ったにもかかわらず、展望台に向かうエレベータには行列が出来ていた。(休日は1時間以上の待ち時間になる)

行列に並んでいると、妙な人たちが目に入った。エレベーターを待つフロアで、何人もの人がひたすらテレビを見ている。工場労働者風のおっさんとか、 買い物途中のおばちゃんとか、そんな感じの人たち。彼らは別にエレベーターを待っているのではない。フロアの真ん中に据えられたテレビを、ひたすら見てい る。

そのテレビのチャンネル主導権は、リモコンを持った切符売り場のおっさんにあるらしかった。彼は観衆の嗜好などお構いなしに、あちこちチャンネルを 変えた。コロコロ変わる画面を、その恐ろしく暇そうな聴衆がじっと見ていた。(ちなみに、この待合いゾーンみたいなところまでは、入場料無料)


ようやくたどり着いた展望台から、薄曇りの市街を見下ろしていると、なんか看板がこっちを向いている。なんだあれは、ラブホテルの看板が、天空に向けて設置されている。

通天閣展望台狙いのピンポイント広告か、、。

鹿島工業団地

Photo: 2001. Kashima, Japan, CONTAX T2 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/38, Fuji-film

Photo: 2001. Kashima, Japan, CONTAX T2 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/38, Fuji-film

工業団地を抜けて、海岸まで来た。車を降りて、僕はContax T2を取り出し、堤防によじ登った。海は時化で、沸騰したように白くなっていた。

こんな景色を撮りたかった。コンクリと、水と、綺麗な景色ではない。でも、嘘がない。


消波ブロックすれすれまで近づくと、波の咆哮が足下から聞こえた。空気が海水の粒子でベタついている。波のリズムが深くなり、おおきなヤツが来そうな気がする。波はとても大きくて、下手したら死ぬんだろうなと思った。

ファインダーの中、一面に泡雪のような波が砕け散った。綺麗だ、とシャッターボタンを押した一瞬。頭の上から、切るように冷たい海水が降り注ぎ、そして何も聞こえなくなった。

バッシャーーーッ。
「うぎゃーーーーーーーっ、波がぁーーー」

鹿島に行ってきた。そして、こんな写真が残った。(カメラが海水まみれ)

それは日常じゃない

Photo: 2000. Kobe, Japan, Nikon F100, AF Nikkor 35-105mm F3.5-4.5D, Fuji-Film

Photo: 2000. Kobe, Japan, Nikon F100, AF Nikkor 35-105mm F3.5-4.5D, Fuji-Film

雑然とした飲み屋、というのも大好きだけれど、気持ちよく整えられたバーで酒を飲むのもいい。たまにはね。

うるさい店は好きじゃない。だから、ちょっと見つけにくい所に行く。

つまみは、干した白無花果、オリーブのピクルス、そんなものをとる。酒は、カクテルを飲む。あるいは、最初はビールを飲むのもいいかもしれない。

ゆっくり混ぜるのか、激しく混ぜるのか。タイミングはどうするのか。カクテルは、バーテンダーの個性がそのまま味になる。だから、腕のいいバーテンダーに巡り会えると、嬉しくなる。

「次、適当に、、」


もちろん、それは日常じゃない。けれど、僕たちの体は日常だけで出来ているのではないのだ。