加ト吉

2000. Shimanto, Japan, Nikon F100, AF Nikkor 35-105mm F3.5-4.5D, Fuji-Film

2000. Shimanto, Japan, Nikon F100, AF Nikkor 35-105mm F3.5-4.5D, Fuji-Film

源流を辿る旅は終わった。腹が減った。

国道沿いに巨大な水車が目に入る。藁葺き屋根の、観光客相手の食堂。そこで、昼メシにすることにした。


冷やしウドンを待っている間、清々と風に揺れる稲穂を眺めていた。頬をくすぐって吹きぬけた風が、田んぼを渡っていく。

隣では、外国人の家族連れが、行儀良く食事をしている。

古い農家を移築した店は、なかなか趣があって、年季の入った板の間にごろりとすれば、たちまち眠くなってしまう。


ウドンはわりと美味かったけれど、店の片隅には冷凍ウドンのダンボールが積んであった。

吹き抜けるゆっくりした風とダンボール、その 2つをよく覚えている。

Mr. エンゾ

Photo:2001. Yakushima, Japan, CONTAX T3 Carl Zeiss Sonnar T* 2.8/35, Fuji-Film RHP III

Photo:2001. Yakushima, Japan, CONTAX T3 Carl Zeiss Sonnar T* 2.8/35, Fuji-Film RHP III

いつのまにか、男が僕の横に立ち、水面を見つめていた。

一呼吸おいて、彼は、滝つぼに飛び込んでいった


男が消えた水面は鮮やかな緑色で、無数のトンボが落ちつかなげに舞っていた。大川の滝が、その上に膨大な量の水を注いでいる。

しばらく見ていると、彼は浮かび上がり、悠然と下流の方に泳いでいく。

そういえば、僕の傍らに立ったとき、彼の髪からは水滴が落ち、水の匂いがした。


屋久島南東部に位置する大川の滝は、落差・水量ともに九州地方でも最大級の滝である。屋久島には 200以上の滝があると言われているが、これだけの大きさで、滝つぼまで近づく事ができるものは少ない。

そして、僕の傍らからいきなり飛び込んだ、Mr. エンゾ。(それっぽかった)

社食って、まかるんですか

こないだ大阪いったんですよ。大阪。
ええ、キライですね、あそこは。なんていうか、メシがお好み焼きだしね。
でも、仕事だから仕方なかったんです。


でね、お客さんのところで、ちょっと時間があまったので、社食に連れて行ってもらったんです。
できたばっかりの建物なんで、社食といっても、えらくキレイでモダン(大阪風表現)な感じでした。会計も、プリペイド・カードだし。

僕はそんなカードもってないので、一緒に行った人におごって貰いました。僕はコーヒー嫌いですから、コーラ・フロート。その人は、アイス・コーヒーと、ミックス・サンド。

そしたら、お金が足りなかったんですよ。プリペイド・カードには、何百円かしか残ってなくて、180円ばかり足りなかった。カード支払いの機械がエラーになっちゃった。そしたら、社食のオバチャンなんて言ったと思います?
「ありゃ?、足らへんな?、ええわぁ?負けとくわぁ?!」


社食って、まかるんですか、、。

注1:作者は粉モノ(お好み焼き、タコ焼きそのほか)が嫌いなだけであり、大阪および、そこの住人に対して何ら誹謗中傷する意図はありません。