エンドロール

映画の試写を見る。自分達のやってきたことが、形として現れるのは、ちょっと凄い。僕たちは、ほんの少しのお手伝いという感じだが、周りに座ってい る、多分、1カット1カットを作った人たちの感慨はまた違うものなのだろうと思う。エンドロールが終わるまで、誰一人席を立たない。部屋が明るくなり、拍手が鳴ると、それまでスクリーンを凝視していた監督が机に突っ伏すのが見えた。

この作品が商業的にあたるのか、そうでないのか、分からないけれど、誰も見たことのない世界がそこにあったことは確かだ。少しでも渦中に巻き込まれ ていると、それがどの程度世間に影響を与えるのか、よく分からなくなる。歴史に残る作品の誕生に立ち会ったのか、そんなこともないのか。そういうことは、 振り返ってみないと、分からないことなのだと思う。少なくとも、僕には。

古き良き東京の変わらない味、鰻重

Photo: 鰻 2004. Tokyo, Japan, Contax Tvs Digital, Carl Zeiss Vario Sonnar T* F2.8-4.8/35mm-105.

Photo: "鰻" 2004. Tokyo, Japan, Contax Tvs Digital, Carl Zeiss Vario Sonnar T* F2.8-4.8/35mm-105.

友人が、今日の気分は鰻だ。というので、鰻にした。

暖簾をくぐると、都心とは思えない静寂。最もお気に入りの、奥の座敷に通された。今の職人ではとてもつくれない、という美しい造作の丸窓、ゆっくり 歳をとった建物の佇まい。昔からの常連さんが多いから、値段が上げられない、と聞いたことがある。だから値段は高くない、むしろ、この時代にこの値段で やっていけるのか?とさえ思う。
「どのくらいのところでお持ちしましょうか?」
「日本人なら真ん中だよね、真ん中のやつで。」

仲居さんは、にっこりして、お茶を出していく。お腹は空いているけれど、ご飯の盛りを良くして欲しいとは言わない。以前、そう頼んだら、お重にみっ しりのご飯が入ってきて、大変なことになった。何も言わなくても、十分なのだ。さて、それからたっぷり 30分も待てば、鰻の登場というわけだ。料理が出来上がってくるのを楽しみに待つ、というのは、なんとも懐かしい感覚だ。


きっちり焦げ目の付いた鰻は、もちろん旨い。でも、周りをうめているものも大切だ。唇が少し痺れるくらいに辛い山椒。炊きたてのご飯と、漬け物の はっとするような爽やかさ。香の物を盛った鉢に、季節の香りが現れている。白菜の白の中に、甘酢で赤く漬けられた蕪の、美しい赤。朱塗りのお膳と、使い込 んだお重。丁寧な仲居さんの応対。何だって同じことだ、ちゃんとしたものを、ちゃんとした仕事で。

食事とは、こういう事なんだと思う。暖簾をくぐって外に出ると、存外冷たい空気。まだ、本格的な春は先だ。

俺とガイジン。(三種盛り)

俺とガイジン。(三種盛り)

ガイジンにとってマツタケは靴下の臭いだ。と読んだ次の日に、ガイジンが来て、マツタケ弁当が出た。イタリア系の人たちは食べていた。インド系の人は残していた。なんとなく分かる気がした。

ん?栗の甘煮もダメなの?ベジタリアン?でもマロンだよ、マロン、、。


やべぇ、お客が超ガイジン。でも。
「どぉーもどぉーも、はじめましてぇ」
めっちゃ日本語じゃん。しかも、しゃべり方がセイン・カミュにそっくりだ。
まあまあ、こちらにどうぞ。ところで、お飲み物は何がよろしいですか?
「そーねー、お茶っていうよりは、、、迎え酒かな、ハッハッハッ」
、、。いったい、何者だよ。


今日も朝からガイジンミーティング。てっきり、でかい陽気なアメリカ人が来るのだと思っていたら、ニヒルで小柄なフランス人が来た。そう、何事も決めつけてはいけないのだ。

ニヒルってあたりが、既に決めつけているわけだが。(名刺に Ph.D とか書いてあったけど、控えめで良い人でした)


注:車で売りに来るカレーにしときゃよかったのに、、。