シン・レッド・ラインは、なんとなく何年も見る気にならなかった。だが、見始めて、最初の3分でこれは自分が生涯好きになる映画の5本に入るんだろうと分かった。
本当に、良いと思う映画には、筋らしいものは無い事が多い。いや、やがて筋は気にならなくなると言うべきだろうか。
一カット、一カットが素晴らしい。
描かれる人生が無常なのも、素晴らしい。
たった1カットの、泥の中でもがいて死んでゆく小鳥の姿が、絶対に忘れられないカットになる、そしてそれが、通底するテーマになる。恐ろしい映画。
良い映画は旅をしている気分になる。
これは戦争映画だけれど、戦争を描いているわけではないのだろう。中間管理職の映画みたいにも観られる。人生の潮目みたいなものの映画にも観られる。
見るタイミングで、いろいろ違う見方ができる底知れない深さがあることは分かる。役者がギャラに関係なくテレンス・マリック監督の映画に出たがるというのも、分かる気がした。