鮨屋。店の奥から気配がして、振り向いたら戸の影から顔を出していたよ。
「もう、18歳なんですよ。家に置いといたら、何あるか分かんないから、ここにね」
人間で言えば、もうご長寿と言われて久しい年齢。でも、毛並みはサラサラと見事で、目は澄んでいた。
僕は食べ物屋に動物が居る事には否定的だけれど、このご長寿の子を手近でみていたい気持ちはよく分かって、悪い気はしなかった。
首を撫でる。ワン、とも鳴かない。優しい目で、見返している。とても賢くて、優しいのだと言う事が、手に伝わる重みで分かる。そういえば、何年も前に、店の大将の家で君に会った気がするな。
帰り際、戸の影から小さく「ワン」と鳴いた。長生きしろよ。
人間でいうと90歳くらいだよねぇ。
ご隠居、といったところでしょうか。目の光が聡明すぎ。