久しぶりにあった仲間達は、なぜだかことごとく(僕も含めてだが)体重を落としていた。一人はサーフィン、一人は走って(僕だ)、一人はプロジェクトやつれ。それぞれの大人の事情なり、日々の思いなりは、それぞれの体型に、微妙な影響を与えているようだった。
それでも、出会ったときから大食いのサーファーは、僕が集合に遅れた15分の間に、既にバターまみれのジャーマンポテト一皿(けっこうなカロリーだ)を平らげていたし、「俺、酒が入ると食べられなくなるんだ」が口癖のもう 一人は、やっぱり皿の上に冷めきったパイの一切れを置いたまま、延々と煙草を吸っていた。
そうして、考えてみれば、初めての給料で、初めて飲んだ三人が、10年を超えて同じように飲んでいるのだ。話題の内容は、いささか大人びた(メンバーの中には、二児の父もいる)のかもしれないが、そこにある実直さというか、ナイーブさ、みたいなものは、あまり変わっていない。もちろん、それぞれの日々の中では、もっと大人なことをしたり、言ったりしているのだと思う。で も、ある時を共有した友達との間には、そういう琥珀に固めたような空気が、やはりあるのだと思う。
ラストオーダーからだいぶ時間が経って、周囲の客が引けるのと共に、店を出た。そうして、多分、10年後も同じように飲んでいることを、あまり疑うことは無く、手を振って別れた。