映画の中の、忘れられない風景。僕にとってリドリー・スコット監督の「ブラック・レイン」に出てくる大阪はその一つだ。(ブラック・レインの日本ロケは大阪を中心に行われている)
ブラックレインの中で、若山富三郎演じるヤクザの親分が、マイケル・ダグラス演じるニューヨーク市警の刑事に、こんな風に言うシーンがある。「3日 たって、防空壕を出ると街は消えていた。炎は、雨を呼んだ。黒い、雨だ。そして、貴様らは我々に貴様らの価値観を押し付け、俺達から文化も伝統も奪った」
日本人の内面は、敗戦前と敗戦後では、おそらく大きく変化した。価値観は断絶し、日本国民という形での、アイデンティティーを持てなくなった。そして、勝利者の価値観がもたらす富と力に二度目の敗北を喫した。
こんな風に書いておいて、おかしな話だが、大阪の街を歩いていると、その「敗北感」をあまり感じない。アメ公?なんじゃ、そないなもん。西欧文化に 対する、妙なへりくだりが無い。東京だったら、負けてなんとなく「しゅん」としてしまうところなのだろうが、きっと大阪の気質はそんな態度を許さなかった だろう。はっきり言ってスマートではないし、洗練されてもいないけれど、一本筋は通っている。
旧日本軍というと、すぐに玉砕とかそういうイメージがあるけれど、関西方面からの部隊の死傷率は、関東のそれにくらべて低かったらしい。お国のため?アホか。そんな感じだったのかも。