民家の裏庭

Photo: 2000. Shimanto, Japan, Nikon F100, AF Nikkor 35-105mm F3.5-4.5D, Fuji-Film

Photo: 2000. Shimanto, Japan, Nikon F100, AF Nikkor 35-105mm F3.5-4.5D, Fuji-Film

「おばあはもう1年前に死んだがよ。それでも、田んぼを放っちょくわけにはいかんきねぇ」

四万十川の源流を目指して、ひたすら車を走らせる我々には、もはやあてになる地図さえなかった。レンタカーのオフィスでもらった大雑把な縮尺の地図では、目の前の農道をどちらに折れればよいのか分からなかった。

そういう訳で、我々は間違った角を曲がり、間違った坂を上って、民家の裏庭に迷い込んだ。裏山から用水が引かれ、山肌に開かれた何枚かの田んぼに注 いでいる。息子達は、田んぼを捨てて都会に出ていった。妻は、去年他界した。だから、田んぼと家はじいちゃんが一人で守っている。

「田んぼは手入れせんと、虫がわくき」

母屋の軒先に、夏の花が咲いている。品種を訊いたが、多分地元の通称で教えてくれたらしく、よく分からなかった。多分、亡くなった奥さんが育てていた花ではないか、僕にはそう思えた。

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