ランウェイの近くまで走った。その間にも、飛行機はみるみる近づいて来る。巨大なジェットは、あっと言う間に頭上をかすめ、鉄条網の向こうに消えた。
少しして、石油ストーブの燃え残りのような、甘くむせっぽい匂いがする。懐かしい、景色だ。
小学校の頃に住んでいた家は近くに空港があって、真上を飛行機がよく通った。
僕はその頃、まだ飛行機に乗った事がなくて、銀色ににぶく光る胴体を、家の庭からまぶしく眺めた。乗りたいとは思わなかった。あれは、特別な人が乗るものだと思っていたからだ。
そして大人になって、飛行機に何度も乗って、何度も旅をした。
僕は旅が好きだ。
注:名古屋国際空港近くの公園は、ほんとに滑走路ぎりぎりまで近づく事ができる。