脳が匂いのデータを処理する領域は、記憶を司る領域に近いから、記憶と匂いは結びつきやすい。というデマっぽい話を長く信じていたのだけれど、改めて調べてみるとそれはだいぶいい加減な話だったようだ。それでも、忘れがたい匂いも、匂いから蘇る記憶も、そういうものは確かにあるので、数年後の科学はまた意見を変えるかもしれない。
20年の時を経て、未だに鮮明に頭の中で再現できる匂いの1つが、San Joseの臭い花の匂い。カラカラの砂漠に、がっしり根を生やした凶暴そうな植物の花は、近づくと咳き込むような臭気を放った。
何のロマンスも、何の美しさも無い臭い匂いが、ずっと忘れられないのだ。