ボンバルディアのタラップを降りると、むわっとした暑さを感じた。ウラジオストクに降り立って、一番最初に感じたのは、暑い、という事だった。滑走路の端に目を移すと、上空から柔らかな牧草のようにも見えた緑の絨毯は、巨大なセイタカアワダチソウのような謎植物だった。
そして、次に目に入ったのは、濃紺の制服に身を包んだ女性ドッグ・ハンドラーと、側らに座る山羊みたいな大きさのジャーマン・シェパード・ドッグつまり K9。かなり離れたところからこちらを注視しているが、命令があれば時速30km/hでアプローチされ、秒殺される確信。これが、真のおそロシアか。
基本、マッチョに溢れたこの国の実際は、最初のシェパードで抱いた印象である「おそロシア」の通りだった。テストステロン溢れるヒグマみたいなロシア人。そんなステレオタイプは実際、その通りだった。この国には、「カワイイ」みたいな概念は多分無い。ひたすら実用的で無骨。もちろん、街角にカワイイ要素なんて何にも無いのだ。
宿の隣の24時間スーパーが便利で、別に用は無くても毎日通っていた。ある夜、入り口に繋がれた犬。飼い主を待っているけれど、僕に尻尾を振ってくれた。かのK9と同じ種とは思えない、初めて見つけた「カワイイ」。お前に会えて良かったよ。