相撲マニアのフィンランド人マキネン(仮名)は、ちゃんこ鍋を食べたくて仕方ないらしい。ちゃんこだちゃんこだと言う。前回来日した時には、「どこ でもいい」と言うから焼き肉に連れて行って生肉を食わしたので、内心懲りたのかもしれない。まあ、そこまで言うならちゃんこに連れて行ってあげるか、とい うことになる。しかし、残暑厳しいこの季節に鍋か?
小汗すらかきながら店にたどり着くと、客は 2組ほど。人気の店と(ネットで)評判だったので予約していったが、そんなものは必要なし。案内しておいてなんだが、ちゃんこ鍋って食べたことないんだよ な。せがまれて名物料理に行ったはいいけど、案内した当人は食べたことが無いって、割とありがちだと思う。相撲だって観たことないし、ちゃんこも喰ったこ とないし、だいたいそんなもんでしょ。
この店のちゃんこ鍋は金属製の浅めの鍋に、白みそ仕立て。エノキ、鶏団子、油揚げ、などなど。ちゃんこ鍋ってどういう意味かと聞かれて、鍋は hot pot だと誤魔化したが(chanko pan が正しい?)ちゃんこの意味が分からない。お店の人に聞いてみたら、ちゃんは親方、こは弟子の意味なんだそうだ。そうか、「ちゃん」ってあの大五郎が叫ん でる言葉か。
マキネンは、スィイタケ、スィイタケと言いながら、エノキダケを喰っている。mushroom のことを、椎茸と覚えているのかもしれない。放置しておく。喜んで食べている彼の顔を微妙な表情で見ている我々に気付いて
「ちゃんこ好きじゃないの?」
と言うが、いや、そういうことではなくて、普通、この時期に鍋は食わない。見ろ、店はガラガラじゃねーか、という話だ。ちゃんこ鍋自体は、少し塩味 が強い気がするが普通に美味しい。でも、なんか冷房をめちゃくちゃ効かせた中で鍋を食べるというのも、ありがたみが無い。それよりは、前菜で出てきた、鰹 のタタキが美味しかった。ネギとポン酢が容赦なくまぶされていて、ポン酢マニアにはたまらん。
それにしても、量が多くて、前菜は2人前、ちゃんこは 3人前を 4人でシェアしたのだが、もういらん。最後のウドンは、2人前で鍋が溢れる感じ。マキネンに「そんなことでは横綱にはなれんぞ」とはっぱをかけて、喰わすもののまるで減らなかった。さすが、ちゃんこ鍋だ。
注:AF 機泣かせの湯気が立つ鍋。うまくなさそうに撮れているが、実際、うまくなさそうな見た目だった。(うまいんだが)
注:ちゃんこ鍋の語源は諸説あるようです。広辞苑ではちょっと違います。
ちゃんこ‐りょうり【ちゃんこ料理】(「ちゃんこ」は「おっさん」などの意で相撲部屋の料理人) 力士社会独特の手料理。多くは魚・肉・野菜などをごった煮にし、ちり鍋風にして食べる。栄養価が高い。ちゃんこなべ。[株式会社岩波書店 広辞苑第五版]