国道の真ん中でオイルを吹いてレッカー移動となった友人のポルシェが、ようやく修理されて戻ってきた。久しぶりに乗せてもらって、例によって思いつきで迷走してみる。
「コースが設定されました」
壊れる前はオーディオはテープしかかからず、紙の地図さえ装備されていなかったが、修理ついでにいきなり HDD ナビが付いて、CD も mp3 もかかるようになっていた。日本のカーナビは、間違いなく世界で最も進化している。なるほど、CD をたたき込むと、片っ端からエンコーディングしてくれるわけだ。PC の世界ではもはや当たり前の機能だが、これは便利。埃を被った U2(!)のテープを引っ張り出してかけていた頃は、それなりに雰囲気もあって(なにせ、年式の古い車なので 80年代の音楽がとても似合う)、それはそれで良かったのだが、やはりハイテクの快適さというものはある。
「まもなく目的地付近です、ガイドを終了します」
着いた所は、なんというか、うらぶれた港湾都市という風情。明らかに治安が良くない感じだ。派手目のジャージでヤンキーな家族連れが闊歩し、エルグランドが走り回り、だだっ広い道路にゴミ袋が舞っている。ここで晩飯喰うんですか。本気ですか。
客が誰も居なかった割に、焼き肉はかなり美味しくいただいた。支店が、実は新宿東口にあるという事実が無ければ、ちょっとした小旅行気分である。いや、むしろ、新宿で食べられるものを、この海沿いの、謎都市で食べる事こそが、正しいのだと思う。でも、「明日早いから」とか言って、帰りに高速を使って しまうのは、よくよく考えると反則のような気がするし、パワーダウン感を否めない気もする。どうせ高速に乗るなら、反対方向に行くべきなのだ、きっと。
注:この文章はフィクションです、実在のエルグランドには何ら関係ありません。