重い、でかい、冷たい金属。今、普通になってしまったデジタル機器としての SLR ではなくて、機械としての SLR の良さが CONTAX には残っている。
CONTAX RX はヤシカ CONTAX の RTS (Real Time System)の流れを組む、プログラム AE マニュアルフォーカス一眼レフだ。CONTAX ST の後継機に当たる機種で、クラスとしては RTS III と Aria の中間に当たるミドルレンジ製品となる。1994年発売だが、2002年に電子部品の入手困難を理由に生産終了している。現在はマイナーチェンジ版の、RX IIが後継機として発売中。デジタル・フォーカス・インジケータ (DFI) が省略されたのが、RX との相違点。その分、ファインダーがちょっと明るくなっているらしい。
35mm SLR のなかで、マニュアルフォーカスカメラはほとんどなくなってしまったが、CONTAX は最後の牙城として残っている。僕も最初は、Nikon の AF SLR を使っていたので、MF のカメラをいまさら買うべきかかなり迷った。実際には、慣れてしまえば MF でもまったく不便は感じない。昨今の AF レンズでも MFで使うことはできるが、ヘリコイドの質感やピントの合わせやすさはやはり MF 専用機が上。
「囁くような」と言われるシャッター音は、現行の CONTAX SLR の中で、最も静粛。ミラーショックも、驚くほど少ない。シャッター音の良さでは、今売られている 主要な 35mm SLR のなかでは郡を抜く。個人的には、RTS III のシャッター音よりも、上品だと思う。シャッターを切るのが楽しくなる、そういう音だ。金属製のボディーは剛性感が高く、冷たい質感が心地よい。軽いこと は良いことだ、という感じの今風一眼レフと比べると、明らかに重いが、レンズとのウエイトバランスを考えるとこれぐらいは必要か。レンズを付けると、 1kg – 2kg にはなるので、ストラップは付属のものでは少し心許ない。皮で金属部を隠す CONTAX のオプション純正ストラップはなかなか良いので、お勧め。
操作形態は、ダイヤルを中心とした CONTAX 共通のシンプルなもので、極めて扱い易い。一見すると操作部が多いように思えるが、最近のデジタル制御のカタマリと化したカメラにありがちな、「ボタン A + ダイヤル操作」のような、複雑なインターフェイスは無く、見えているものが一対一で機能に結びつくので、実は覚えるべき操作は少ない。CONTAX が初めて導入した多段露出機構、プレビュー機能、などハイエンドユースに必要な機能は備えるが、逆に特筆するようなギミックは、 DFI ぐらいしかない。DFI はマニュアルフォーカスの補助機能で、フォーカスが合っているかどうかを、ファインダー上に表示してくれる。(もちろん、レンズは動かないので、あくまで 手で合わせる)センサーが、ものすごくセンシティブなので、手持ちで実用に使うには厳しい。あくまで、参考として使う感じ。(RXIIで廃止されたことか らも、実際にはあまり使われなかったのだろう)一つ残念な点は、データバックはコマ間のデータ写し込みに対応しているのだが、露出データを入れることがで きない。これは、RXII でも同じで、下位機種の Aria では可能なだけに、後継機(そんなもの出るのだろうか?)では是非対応して欲しい。ちなみに、モーター駆動が少ないので AF を使っている人には想像できないぐらい、電池はよく持つ。
色々書いたが、スペック上は全く派手さが無いものの、バランスとパフォーマンスに優れた実用機種だと思う。
ちなみに、フィルムドライブに関しては、まるで信用できない。前々から CONTAX のミドルレンジ機で指摘されてきたことだが、フィルムの装填に失敗するケースがあったり、撮影終了後の自動巻上げがきかない場合があったりする。かぶり で、撮影済みのフィルムを失いたくなければ、巻き上げボタンを使って手動で巻上げを確認するくせをつけておいたほうが良い。また、気休めかもしれないが、 装填するときの、フィルムの引き出しには、最大限の注意を払う必要がある。
注:京セラのカメラ事業撤退により、CONTAX の全ての製品は現在生産中止になっている。