デフレ時代にくさびを打ち込む、モスの匠味(たくみ)バーガー。噂は聞くが、喰った奴を見たことがない。それは、本当にうまいのか、レポートしてみよう。
まずスペックから。匠味バーガーは、フランチャイズのファーストフードとしては傍若無人の 580円、牛丼 2杯より高い。ただし、バンズ、パティ、ソースについては匠味専用仕様、調製は選任担当者が行い、提供は専用の陶器皿となる。注意点として、現在、このメ ニューは店舗限定・数量限定(多分 1日 10個)なので、なかなか買えない(らしい)。
限定・選任・専用というキーワードは、かなり僕の心の琴線に触れると言わざるおえない。では、取材班総勢 3名で食べに行ってみましょう。
ターゲット店舗の販売開始時刻は 15:00。我々は近所のラーメン屋で、くそまずい塩ラーメンを食いながら、販売開始を待つ。
15:00、突撃。なんか、レジに行列が出来ている。周りの客も皆、匠味バーガーを頼んでる。調理場に「タクチー」のコールが響く。なるほど、匠味バーガーに更にチーズをトッピングした匠味チーズバーガーもあるのか。じゃあ、それ。そして、15:06 匠味バーガー売り切れ。本当に凄い人気。我々のテーブルには、御待ちくださいの札が 3つ並んでいる。アホっぽい。
10分ぐらい待っていると出てきます。しかも、調製者のサインと日付、シリアルナンバーの入ったカードがついてくる。
結論から言うと、匠味バーガーは美味しかった。まず、ちゃんと大きい。「なんだよ、写真と違うじゃないか?」なんてことはない。大口を開けないと喰 えないので、ガブリと。とにかく、バンズがうまい。甘みを抑えてハンバーガーに合うようになっているそうで、ふっくらしていて美味しいパン屋さんの味がす る。中にはちゃんとソテーしたタマネギがたっぷり挟んであるし、ソースの粗挽きこしょうが芳ばしい。パティは肉汁がきちんと入って、普通にハンバーグとし て通用しそう。
見た目、「かなりでかい」感じで、多そうだと思ったが、むさぼり食って終了。でも、ファーストフードを食べた後の、いやな感じがまったくしない。取材班全員の意見として、「あり。ウマイ」
とっても丁寧につくられていて、普通に美味しいという感想。テイクアウトよりも、できたてを食べるのがお勧め。そんなところで、レポート終了。
さて、匠味バーガーは美味しかったし、580円(チーズは 640円)を払うのはまったく問題ないと思う。というか、次も食べたい。こういう商品が出てくるようになって、それが人気を集めているということに、いろいろ思うところもある。
安いモノ探しに消費者が疲れた、ということもあるのだろう。それにもまして、モノ中心の消費の形態が変わってきたような気がする。単なるモノと金の 交換というのではなくて(そこでは、どれだけ効率よく少ない金でモノを手にするかが鍵なわけだが)、モノを通した関係の中に心地よさを見いだす。あるい は、モノを通して実現する自分のスタイルというものに、金を使うことを心地よいと感じる。モノがあふれたこの時代にあって、一瞬、モノの値段を下げて差別 化するという流れがあったわけだけれど、それが一段落して、モノとサービスを通じて、売り手と顧客との関係の中で差別化をする方向に動きが変わってきてい ると感じる。それは、ともすればバブルの時代となんら変りがないが、もうちょっと洗練されたというか、落ち着いた賢い金の使い方みたいなものが、今回はあ るような気がする。
一方の売る側からすると、人手をかけるのは非効率で悪いこと、という少し前までの考え方から、かけるべきところに人手をかけて、その分のコストを きっちり価格に転嫁しても、それが納得のいくコストパフォーマンスであれば買ってもらえる。調製者のサインと、シリアルナンバーが入ってくる匠味バーガー の価格とその売れ方を見れば、そういうトレンドが間違いなく来ていることが分かる。(あくまでパイロットプログラムの商品だから、分かりやすいようにそう した「シンボル」が入っているのだろう)
コスト削減の大量生産・大量消費はどう考えてもつまらないけれど、匠の時代だったら、それは面白いだろうと、ちょっと希望をもってみたり。
注1:匠味バーガーの販売時間は多分店舗によって異なります。タマネギをソテーしていたり、手間がかかるので、選任の人しかつくれません。きっとその人の シフトとかに合わせられていると思われる。あと、匠味バーガーと匠味チーズバーガー合わせて 10個限定という数え方になっているみたいなので注意。
注2:実際には3日ぐらい家に帰っていない状況で、放浪の末食べているので、その体調で美味しく感じたのだからたいしたもの。