深夜。店はそれほど混んでいなかったから、いつもの一番奥のカウンター席を用意してくれた。もう、食べた後だったからガルフ・ストリームから頼むことにした。
今日は一人の客が多かった。皆がかってに、面白かった映画の話をして、わいわい騒いでいる。
「ラップは嫌いだけど、8 Mile は面白かったよ」
実際面白かった、Brittany Murphy も可愛かった。期待しないで観たのだけれど、テンションが高くて、絵も綺麗だった。
店長がカウンターの隅で煙草をふかしている。
「なんで皆バーに行くんだろう?」
「面倒くさい付き合いはしたくない、でも寂しい。だからこういうお店で、たまたま会った人と話をして、、その場が楽しかったらそれでいい、みたいな」
「、、ん、、」
「寂しいことかもしれないけど、そういう時代になったんだと思う。バーもだんだん変わっていくんですよ」
外に出ると、すっかり夏の朝だ。店長が店の外まで送ってくれた。
それほど酔っていなかった。街は寝ていて、空気はまだ新鮮だった。