いつのまにか、男が僕の横に立ち、水面を見つめていた。
一呼吸おいて、彼は、滝つぼに飛び込んでいった
男が消えた水面は鮮やかな緑色で、無数のトンボが落ちつかなげに舞っていた。大川の滝が、その上に膨大な量の水を注いでいる。
しばらく見ていると、彼は浮かび上がり、悠然と下流の方に泳いでいく。
そういえば、僕の傍らに立ったとき、彼の髪からは水滴が落ち、水の匂いがした。
屋久島南東部に位置する大川の滝は、落差・水量ともに九州地方でも最大級の滝である。屋久島には 200以上の滝があると言われているが、これだけの大きさで、滝つぼまで近づく事ができるものは少ない。
そして、僕の傍らからいきなり飛び込んだ、Mr. エンゾ。(それっぽかった)