綺麗な紅葉ではなかった。葉には虫喰の跡が残り、枝には蔦がからんでいる。
西日の当たる、うちすてられたような場所に、木は立っていた。木は動けないから、じっとそこに生えている。もし、木が動くことが出来たなら、都会の木はみんな逃げ出す。そんな話を、聞いたことがある。
新宿御苑にたどり着いたのは、日がおちかかる夕暮れ時。この季節、紅葉を求めてここを訪れる人間は3種類居る。家族連れ、カップル、カメラマン。
残された僅かな日の光に、ありとあらゆる種類のカメラをもった人びとが、わんさか群がっている。Canon, Nikon, Minolta, CONTAX, Leica, Hasseleblad, Rolleiflex、夕日を浴びる紅葉に、無数のレンズが向けられていた。
でも、僕が見つけたこの赤茶けた木は、なんだかまるで人気がない。誰も見向きもしない。そりゃ、あんまり綺麗じゃないし、隅っこにあるし。でも、なんとなく頑張っているように見えたので、僕はこいつを撮ることにした。
葉っぱは煤けていたけれど、よく見れば新芽のようなものがあった。色だって、よく見ればすてたもんじゃないよね。